第九章 知らぬは…

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------------------ 「それじゃ、また。とりあえず俺は来週そっちに顔出すから」 「二人仲良くね」 「アリスちゃん、ちぃ兄ちゃんをよろしく」 孝太郎さんの実家が東京駅近くのホテルの和食レストランで開いてくれた“帰国報告会”という名の食事会には、孝太郎さんお義父さんお義母さんと、義妹の野菊さんが参加。 お義兄さんの杏太郎さんと美津紀さん夫婦は、スケジュールが合わずに来られなかった。 でもまあそもそもこの“帰国報告会”。先週の披露宴で皆んな会ってるんだから、そう毎週顔を合わせなくてもいいんとは、個人的には思うんだけど。 て、まあ私の立場では言えないけど。 食事会自体は和やかな感じで、私たちにとっては久しぶりの和食ということもあって、美味しくいただいた。 そして先程食事会が終わり、東京駅に移動したんだけど、何故か全員がぞろぞろと駅まで着いてきた。 一応レストランを出る時に、“お気遣い頂かなくても、ここで結構です”とは伝えたんだけど、なんだかんだ言って結局着いてこられてしまった。 別にイヤとかじゃないけど、なんだかまだ義実家との距離感が分からない。 駅のコンコースでようやく孝太郎さんの家族と別れると、私と孝太郎さんは、改札を抜けて新幹線乗り場を目指した。 孝太郎さんは、すぐ来週東京出張があるからといって、スーツケースはお義母さんに預けて、機内持ち込み用の小ぶりのバッグ一つで身軽になっていた。 スーツケースに入ってたものは、旅行用として普段用と分けて用意したものらしく、今日明日無くても困らないらしい。 ---男の人は気楽でいいな。 中に入ってる洗濯物も、結果的にお義母さんが洗うってことになるのかな。多分洗っちゃうんだろうな。 彼の奥さんとなった私の立場としては思うところはあるけど、それはまあ、置いといて。 私は、スーツケースをお義母さんに預けて帰るなんてわけにもいかず、一人ゴロゴロと引きずりながら歩いてる。 スーツケース以外の、私の機内持ち込み用のバッグや手持ち分のお土産は孝太郎さんが持ってくれたし、しかも私自身が、「重たいスーツケースは自分で持つから」って言ったんだけど、なんだかモヤる。
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