第九章 知らぬは…

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私はキャリーバッグを引っ張って歩きながら、膨らみかけた不満を収めるべく、帰国してからのことを冷静に整理してみた。 新婚旅行から帰ってすぐ、休む間もなく義実家と食事会。 孝太郎さんは自分の荷物は義実家に預け、身軽になってゆったり移動。 そうそう。 そもそも旅行先にニューカレドニアを選んだのも彼の強い要望から。 フライト日時の都合とはいえ、関空発着便じゃなくて成田発着便を選んだのも、もしかしたら食事会を組み込みたい義実家に仕組まれたモノだったりして…。 そうだ。新婚旅行中のエッチの時に私の意向を無視して…されたし! あ、それは関係ないか…。 でも、それもこれも含めて、私がモヤってるのは間違いない。 …って、ダメだダメだ。 冷静になろうとしても、逆にどんどんネガティブになってる。 無理にでもポジティブに考えよう。 ニューカレドニアは私だって最後は賛成したし、しかも楽しかったし。 成田発着便にしたのも、関空発着便は火曜木曜しかなくて彼の結婚休暇のスケジュールとの相性が悪いからで、それ以上の理由なんてないはずだし。 となると食事会も、成田からの帰り道、東京に“夫”の実家があるのに“嫁”となった私が挨拶なしで素通りするのもまずいと、私の立場に気を遣って忖度してくれた結果かもしれないし。 彼の荷物だって、普段使わないものしか入ってないなら、お義母さんに預けて帰るのも、合理的って言えば合理的だし。 --------------- 「あーちゃん?どした?大丈夫?」 そんなことを黙って考えていたら、結構眉間に皺が寄っていたらしい。   気づくと、隣を歩く孝太郎さんが、不安そうに私の顔を覗き込んでいた。
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