第九章 知らぬは…

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私は、新幹線が好き。 “鉄分”は全然濃くはないけど、新幹線だけは何故か分からないけど、好き。 その中でも、大きな都市を最速で結ぶのぞみもいいけど、各駅停車でのんびりと移動できるこだまの方がもっと好き。 こだまの停車する駅は、それなりの規模の街の場合もあるけど、いろんな事情で大きな街じゃないところにできた駅や、それなりの大きな街だけど、諸事情で町外れにできた駅なんかもある。 そんな駅のある街の風景を見るのが、私は好きなんだ。 こだましか停まらない駅に近づいた時、スーツ姿のサラリーマンが大勢立ち上がり、降りるためにデッキに向かって移動を始めることがある。 “なんでこの駅で?” そう思って、減速を始めた新幹線の窓からその駅周辺を見渡してみれば、駅の近くに、私でも名前を知ってるような、全国展開してる大きなメーカーの工場があったりする。 “あ、そういえばこの街は◯◯の生産で有名だって、中学の社会科の時間に習ったっけ” なんて思い出したり。 駅ごとにそんな発見もあったりするので、のぞみよりゆっくりと流れる車窓を眺めているだけでも、結構楽しい。 とは言っても、東京から新大阪までのぞみだと二時間半。ひかりでも三時間弱だけど、こだまだと四時間かかる。 流石にずっと座ってるのお尻が痛くなるのは否めない。 でもまあ、ニューカレドニアから成田まで九時間弱のフライトでエコノミークラスに座ってた時間と比べれば短いし、飛行機の中よりは自由に立ったり座ったりはできる。 学生時代に、夜行バスであっち行ったりこっち行ったりして、お尻が取れそうな思いをしたことがあるけど、それに比べればこだまでの移動なんて快適そのもの。 こだまには車内販売は無いけど、その分途中の駅で追い越し待ちで結構長い時間停車するので、ホームに降りて売店で買い物することだってできる。 イヤホンでお気に入りの音楽を聴きながら、窓の外を眺めてぼーっとして、時々トンネルの出入りの瞬間、車体が気圧で膨張収縮するのを感じでいられるのって、なんて幸せなんだろう。 そして時々、隣に座るダンナ様の横顔を見つめながら、さりげなく手を握ったりしちゃったりなんかして…。 あ…、私幸せだなあ。
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