プロローグ

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------------------- 「はぁ…」 私はプロポーズに関するネット辞典の記事を読んだ後、ため息と共に、持っていたスマホをクッションの上に放り投げた。 まだプロポーズをされた訳じゃない。 でも孝太郎さんは、最近それとなく匂わせてきてた。 “匂わせ女子”ならぬ、“匂わせ男子”、いや“匂わせおじさん”だ。 それと、二人で出かけた時に、すれ違った子供連れの若い夫婦の姿をじっと目で追っていることも、一度や二度ではなくなった。 他にも、昔に比べて芸能人の結婚ニュースが彼の口から話題に登ることも増えた。 そこにきての、『ゼクビィ』だ。 ヤツは確実に私の外堀を埋めにきていた。  そして、明後日の土曜、孝太郎さんが、私の地元にやってくる。 土曜日は久しぶりに夜遅くなる予定で、既にお母さんには門限に遅れることの許可は得ている。 そもそも孝太郎さんのことは親公認だし、二人で外泊したこともあるので、今更なんだけど、今回だけはなんとなく“空気感”が違う。 お母さんも何かを察したのか、遅くなることを伝えた途端、何故か私よりソワソワしてた。 これは、ひょっとするとひょっとするのかな。 そんな予感がする。 彼は、外堀は十分埋まったと思ったのかな? いざそうなったとして。 天の邪鬼な私でも、孝太郎さんのことが好きか嫌いか聞かれたら、付き合い始めた大学生の頃に比べたら、今は、“多分好きってことでいいんじゃない?”と言えるくらいには、好意を抱いていることを自覚している。 でも、今、このタイミングで結婚となるとなぁ…。 結婚にずっと戸惑いがあるのは、私という人間が結婚することに対して、めちゃくちゃ不安がある…というか、臆病になっているせいだ。 その原因はというと…。 今まで育った環境のせいかもしれない。 実は私の両親のうち、お父さんと私は、血は繋がっていない。 私が小学生の頃お母さんが離婚して、その後再婚したのが今のお父さん。 その後、弟の悠斗が産まれたりして、二人とも悠斗と同じくらい私に愛情を注いで、すごく気を遣ってくれたんだけど、思春期を迎えた私には返ってそれが心苦しかった。 そんなこんなでストレスが蓄積したのか、私の思春期は少しトンガってて、お母さんにはかなり迷惑をかけた。 俗に言う、“反抗期”だ。
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