プロローグ

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お母さんと、前のお父さん…木田さんっていうんだけど、木田さんは、木田さんの浮気を原因に離婚した。 木田さんとお母さんは同い年の同僚で、愛し合って結婚したはずなのに、木田さんは単身赴任中に浮気して、結局その時は、浮気相手を選んだ。 あ、言ってなかったけど、木田さんもお母さんも、今のお父さんと同じ帝産銀行で働いていた。 そして、孝太郎さんも、帝産銀行の行員…。 いや、単身赴任した帝産銀行の行員に浮気グセがある訳じゃないけど…。 (現にお父さんはしてない…はず) 孝太郎さんに限っては、そんな心配はないと信じてる。 だって孝太郎さん、私にメロメロだし。 …って、自分で言うことじゃないよね。 でも、新婚なのに単身赴任で二重生活とか考えちゃうと、胸の辺りがモヤモヤする。 それとやっぱり。 正直、二人の歳の差は気になってる。 私はそこまで気にしてないけど、彼の本心はどうだろう? 彼には、私の言うことすること、なんでも許してくれそうな雰囲気はある。 でもむしろ、彼の方が10も歳下の私に合わせるのが、疲れてるんじゃないだろうか。 彼は見た目もまあまあイケてる方だし、性格もそこそこイイので、年相応で仕事もバリバリできて、家事もそつなくこなす、それでいて性格のいい、優しいパートナーがすぐ見つけられるんじゃないか。 方や、私こと高橋アリス。 “のっぽのサリー”ならぬ、のっぽのアリスで、小柄で愛くるしいという男心をくすぐるポイントからは大きく外れた、大柄な高身長女子。 社会人になって3年目。 仕事はまあそれなりだけど、性格はガサツで料理は苦手。学生時代までは時間にルーズだったし、なにしろ性格が素直じゃない。 “三つ子の魂百まで”じゃないけど、思春期に形成されてしまった天の邪鬼な性格は、そう簡単に治るものじゃない。   ------------------- 人生の大きなターニングポイントである『結婚』。 “私の結婚相手は孝太郎さんでいいの?” じゃなくて、 “孝太郎さんの結婚相手は、本当に私でいいの?” 実は私が結婚を躊躇ってるってのは、こっちの理由が正しいんだろうな。 あー。 こんなに悩まされるのも、全部ヤツのせいだ。
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