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「…で、アリスがついに結婚ねえ…。
私たち三人の中で結婚するのがアリスが一番早いだなんて、高校時代のアリス知ってたら、信じられないよね」
「ちょ、ちょっと待って。まだ結婚が決まった訳では…。
そもそも。
そもそもだよ?
プロポーズされると決まった訳じゃないし。
されてもオッケーするかどうかなんて、決めてないし…。
ただヤツが『ゼクビィ』買ったり、結婚を匂わせるような仕草をするようになったってだけだから」
慌てる私のいい草に、ビデオ通話に切り替えたスマホの向こうで、有紗がやれやれといった感じでため息をついた。
「でもさ、孝ちゃんさんが行動した事実って『ゼクビィ』を買ったっぽいってだけで、それ以外の“若い夫婦を目で追ってる”とか、“芸能人の結婚のニュースに敏感になった”って、それ全部アリスの主観だよね?
アリスが一人で盛り上がってる可能性もある訳だよね?
それって、アリスの方こそ、結婚を意識しちゃってるってことなんじゃないの?
まあ?私も孝ちゃんさんが『ゼクビィ』買ってアリスに見せつけたってことは、孝ちゃんさんもそのつもりがあるんだとは思うけど?」
「で、でも…」
「じゃあさ。アリスはどうして欲しいわけ?
孝ちゃんさんと結婚したくないの?
アリスの愚痴通り、孝ちゃんさんが、もっと孝ちゃんさんに歳の近い他の女性のところに行ってもいいってこと?」
「それは嫌…っていうか、でもヤツがそう言うんなら仕方ないっていうか…」
「もう!煮え切らないなあ。
孝ちゃんさんは、アリスのこと、もう6年も大切にしてくれてるんだよね?
アリスも、いちいち言い方が天の邪鬼だけど、孝ちゃんさんのことが好きなんだよね?
じゃあ、何を迷うことがあるの?
結婚に早い遅いは関係ないの。
要はタイミングだから。
お互いが『結婚』を意識した時が、そのタイミングだよ」
「むう…」
正論だ。
有紗の言うことは、至って正論。
私は、自分の天の邪鬼さに自分で翻弄されてるだけで、付き合い始めたころは別にしても、今となっては、孝太郎さんのことが好きで好きでたまらないのだ。
“歳が離れすぎてて…”は、完全に自分に自信のないことの裏返しだ。
しかし、有紗は結構はっきりと言ってくれた。やっぱり持つべきものは親友だ。
多分、電話したのが有紗じゃなくて歌恋だったとしても、同じことを言ってくれたはずだ。
私は照れ隠しで有紗に悪態を吐きながらも、心の中で、有紗と、多分同じ忠告をしてくれるはずの歌恋に感謝しつつ、通話終了ボタンを押した。
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