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呼独
季節外れのセミに会った
終わった夏にしがみついて、もういないメスを呼んでいた
そいつは誰にも届かない歌を口ずさむ52hzのクジラみたいに孤独で
終わった恋から離れられない
窒息した僕そのものだった
忘れたかった
忘れることは許されなかった
形のないものだからこそ 色褪せてもそこに在りつづけるから
旅に出よう
携帯電話の電源を切って
行き先もなく
帰る場所も忘れて
思い出すらも振り切った
旅の途中 人の流れを外れた先で
路地裏の黒猫に会った
捨てられたスイカバーの脇に座り込んで
シケモク咥えて唸ってた
「セミはもう死んだ お前はいつまで 生きてるつもりだ?」
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