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僕だって、彼女のことは好きだった。
気付けばいつだって視界の端には彼女がいたし、いつの間にか目で追っていたこともあった。
教室に入れば真っ先に彼女を探した。見付けた時は、心が踊った。
何の気なしに話しかけようとして、でもその「何の気なし」が、一番難しくて。
冷静に考えれば、なんでそんなに話しかけたいのかもわからなくて。
そんな自分に気付くたびに、鼓動は叫んで、痛みにも似た感覚が心臓を刺して。
目を離しても、心臓はチクチクと落ち着かない。
「だから君と付き合えた時は、本当に嬉しかった」
けれどそんな感情も、いつかは萎え枯れて。冷たい雪の下に埋もれていく。
雪の積もるように静かに、そして積雪の世界(たいに、白けていく。
「私は今も好きですよ」
「僕だって、今だに好意はある」
「でも、もう遅いんですよ……」
泣き出した彼女に背を向けた。
彼女への気持ちは好意には違いないけれど、それが恋であるかはわからない。
僕は彼女の白すぎる優しさに、恋をしていたのだから。
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