【 第3話: 仕事はつらいよ 】

1/6
60人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ

【 第3話: 仕事はつらいよ 】

 僕は、初めての出勤で緊張していた。  緊張し過ぎて、吐きそうなほどだ。  会社に着くと、メガネをかけた上司らしき人が僕を待っていた。 「おい! 遅いぞ、新人!!」 「あっ、す、すみません……」 「新人だったら、新人らしく、先輩社員よりもっと早く来い! 分かったな!」 「は、はい。明日からそうします……」  僕はいきなり1日目のドショッパツから怒られた。  最悪だ……。  その人は、僕の配属先の部長らしく、職場の人たちを集めて、僕を紹介してくれた。 「え~、みんな集まって。今日から一緒に仕事することになった『相場(あいば)くん』だ」 「あ、『相場 友也』と言います。今日から、よろしくお願いします」  配属先は、ざっと数えて、20人程いる部署らしい。  大勢の前で、僕は緊張で声が少し上擦(うわず)っている。 「じゃあ、早速ですまんが、ここへ行って来てくれるか」  部長はそう言うと、僕に1枚の名刺を手渡してきた。 「えっ? いきなりですか……?」 「何だ? ヤダってのか? 新人」 「い、いや、行きます……」  マジかよ。仕事ってこんな感じなんだ……。 「よし、じゃあ一人で行って来てくれ」 「ひ、一人でですか……?」 「ああ、一人でこの取引先の会社へ行って、昨日の納品ミスを謝って来てくれ」  えっ? 訳が分からない……。 「ひ、一人で謝りに行くんですか……?」 「ああ、そうだ。何だ? 不満でもあるのか?」 「い、いえ。あ、ありませんけど……」 「じゃあ、素直に謝りに行って来い!」  僕は初日の一番初めに、取引先の会社に謝りに行くという仕事を頼まれてしまった。  会社を出る準備をしていると、隣には腕組みをして、(ふく)れっ面の希さんの姿があった……。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!