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【 第3話: 仕事はつらいよ 】
僕は、初めての出勤で緊張していた。
緊張し過ぎて、吐きそうなほどだ。
会社に着くと、メガネをかけた上司らしき人が僕を待っていた。
「おい! 遅いぞ、新人!!」
「あっ、す、すみません……」
「新人だったら、新人らしく、先輩社員よりもっと早く来い! 分かったな!」
「は、はい。明日からそうします……」
僕はいきなり1日目のドショッパツから怒られた。
最悪だ……。
その人は、僕の配属先の部長らしく、職場の人たちを集めて、僕を紹介してくれた。
「え~、みんな集まって。今日から一緒に仕事することになった『相場くん』だ」
「あ、『相場 友也』と言います。今日から、よろしくお願いします」
配属先は、ざっと数えて、20人程いる部署らしい。
大勢の前で、僕は緊張で声が少し上擦っている。
「じゃあ、早速ですまんが、ここへ行って来てくれるか」
部長はそう言うと、僕に1枚の名刺を手渡してきた。
「えっ? いきなりですか……?」
「何だ? ヤダってのか? 新人」
「い、いや、行きます……」
マジかよ。仕事ってこんな感じなんだ……。
「よし、じゃあ一人で行って来てくれ」
「ひ、一人でですか……?」
「ああ、一人でこの取引先の会社へ行って、昨日の納品ミスを謝って来てくれ」
えっ? 訳が分からない……。
「ひ、一人で謝りに行くんですか……?」
「ああ、そうだ。何だ? 不満でもあるのか?」
「い、いえ。あ、ありませんけど……」
「じゃあ、素直に謝りに行って来い!」
僕は初日の一番初めに、取引先の会社に謝りに行くという仕事を頼まれてしまった。
会社を出る準備をしていると、隣には腕組みをして、膨れっ面の希さんの姿があった……。
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