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「友也くんは、今学生?」
「い、いえ。明日から会社勤めです……」
「そうなの? じゃあ、あまり睡眠の邪魔をすると、明日起きれなくなるね。私そろそろ消えるね」
「あっ……」
彼女はそう言うと、徐々に体が薄くなっていき、最後には完全に姿が見えなくなった。
このことが夢だったのか、本当の出来事だったのか、半信半疑だった。
やがて、また睡魔が襲い、僕は知らない間に、眠りについていた。
――朝になり、僕が目を覚ますと、彼女の姿はなかった。
やはり昨日の夜の出来事は、夢だったのかと思うと、何だか少しホッとする。
でも……、
ふと枕元を見ると、あのノートが置いてある……。
あれは、夢じゃなかったのか……?
僕はそのノートを手に取り、日記の2ページ目を開いて見てみる。
『4月3日 月曜日』
『今日は出社1日目。元気にいっぱいお仕事するぞーっ!』
と、少しテンション高めの出だしから始まっていた。
今の僕のテンションとは、明らかに異なるものだ。
僕は今、会社に出勤するのがとても不安で、期待よりも、むしろ怖さの方が勝っている。
そんなドンヨリとした気持ちの中で、日記を見つめていた。
『新しい紺の制服で、決まっている私。そんな私はこの世で一番かわいいのだーっ!』
その日記の内容は、とてもポジティブで、恥ずかしくなるほど能天気、いや、プラス思考な内容だった。
でも……、
しばらく、読み進めていると、また隣に人の気配を感じた……。
「おはよう。友也くん!」
「う、うわぁーーっ!! で、出たぁーーっ!! お、お、おばけーーっ!!」
布団の上に尻餅をつき、慌ててそのまま3、4歩後退りする。
「もう、学習してないな~。昨日会った『希』よ」
「の、の、希さん……?」
おばけの希さんは、何故か笑顔だ。
お顔を斜めに傾けながら、僕の方を見て笑っている……。
「そうよ。分かった?」
「ほ、ほんとに昨日の希さん……?」
「うん。本物の希」
「ゆ、夢じゃなかったんだ……」
「夢ではなさそうよ」
このおばけの希さんは、本物のおばけらしい……。
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