amoroso

5/22
95人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
 さりげなく近づいて様子を窺ってみると、確かに男子は可愛い女子集団にデレデレだったけれど、彼女達は慣れているのか適当にあしらっていて何も心配いらなさそうだった。  これならこのままそっとしておいてもいいかなと思った時、ふいに六華の彼女――確か風花ちゃんと目が合った。すると座っていた彼女が突然立ち上がり、真っ直ぐに私の方に近寄ってくる。  相手は一応お客さんなんだからここで逃げるのもおかしいし、どうしたもんかとあたふたしていると、風花ちゃんが私の目の前で立ち止まった。 「前に六華君と一緒にいた人ですよね?」  背中で手を組み、風花ちゃんは人懐こい笑顔を咲かせた。一見クールな印象の美人なのに、笑うと可愛い。そして顔が小さい。細い。間近に見る美少女に緊張して、どぎまぎとしてしまう。 「あ、はい。多分そうです」 「やっぱり!」  胸の辺りで両手を合わせ、嬉しそうに風花ちゃんがはしゃぐ。もしかして、Vintageのこと聞いていてお友達になりましょうとかそういう感じかな、なんて思った私は甘かった。  風花ちゃんは急にすっと笑顔を消し、冷たい視線を私に向けた。美人の真顔ほど迫力のあるものはないと知った。 「グループだか何だか知りませんけど、六華君は私のなんで。そこのところ、よろしくお願いしますね」  あまりの変貌ぶりに私が上手く反応できずにいると、彼女は言いたいことはそれだけだという風にすぐに友達の待つ席へ戻っていった。その頃にはすっかり天使の様な笑顔を張り付けている。  今起こった出来事についていけずに呆気にとられていたけれど、少しずつ思考が追いついてくると、今までにはない感情がふつふつと湧き上がるのを感じた。  六華の彼女だか何だか知らないけれど、ラブラブなのも別にいいけれど、それを私に言ってどうするのだ。そもそも六華は物じゃない。風花ちゃんにとって大切なたった一人の彼氏かもしれないけれど、私達にとってもたった一人の代わりのきかないメンバーだ。  その場から一歩も動けずに唇を噛みしめる私に気付いて、傍で接客をし終わった季依ちゃんと真由子が私の手をひいてパーテーションの裏に連れて行ってくれた。既にそこに六華の姿はなかった。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!