飲まず嫌い伯爵

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飲まず嫌い伯爵

僕はまた、一色さんの入れた紅茶が飲みたくなって、ついフラフラと紅茶研究会の扉を開けていた。 そうしたら… 上から下までエスニックファッションという出立ちの、クセの強そうな人がいた。 「会長です」 一色さんがそう言うと、 「ぃよろしくぅ!」 と威勢の良い挨拶が飛んで来た。 「紅茶研究会会長の小泉巻(こいずみまき)だ。新入りさん、よろしくね」 僕はメンバーになりたくて来たわけじゃないんだが。 「話はかずっちから聞いてるよ。紅茶苦手なんだって?」 「はい、まあ、そうです。ってか、かずっち!?」 「巻さん、その呼び方はやめてほしい、といつも言ってるじゃないですか」 一色さんが溜め息を吐いた。 「まあまあ、いーじゃん」 会長さんはグイグイ来るタイプの人らしい。 僕もちょっとたじろぎ気味だ。 「苦味と渋味の区別も付かないなんて味オンチ?よっぽど不味い紅茶ばかり飲んでたんじゃない?」 会って早々グイグイダメ出しされてる僕って…。 「岡本さんが困ってますよ」 一色さんが助け船を出してくれた。 「ああ、ごめんごめん。つい口がスベって」 と言いながら会長はペットボトルに口を付けた。 「自分で入れた紅茶は飲まないんですか?」 ここぞとばかり、ついイヤミ返しで言ってみたら、 「今のペットボトル紅茶は優秀だよ!日本の企業努力のたまのもだね!これなんかコンビニのプライベートブランドで手頃な価格で楽しめる」 会長の持っているペットボトルをよく見ると、 セブンイレブンのロゴと商品名があった。 「アールグレイって何ですか?」
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