きっと、あなたに、届くから

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 あれ、これはこういうオチだったかな。20代の頃に読んだ作品などは、細部を結構忘れてしまっていた。しかし、あれから50年? この年になって改めて読んでも、太宰治はやはり面白い。流石に世代を超えて読み継がれるだけあるなと、私は再度感心した。  映画に関しても趣味が合い、二人ともチャップリン、しかも「街の灯」「ライムライト」と言った、彼の映画の中でも「泣ける」名作を好んだ。邦画なら小津安二郎「東京物語」「秋刀魚の味」が好きだという共通項もあった。もうすぐ70歳になる私はともかく、にゃあごさんの趣味は、ずいぶんと渋いものであった。  それにしても、趣味の合う人と世代を超えて話ができるという事は、ありがたい事だ。まったくもってオンライン様々。現実世界では、こんなお爺ちゃん相手にしてくれないだろうに。私は毎朝フェイスブックを開くのが、楽しみになった。  ところが、ある日を境ににゃあごさんからのコメントが付かなくなった。個人メッセージも送ってみたが、既読が付かない。どうしたんだろう、何か変な事を書いただろうか? 私はメッセージの履歴をさかのぼり、二人のやり取りを今一度読み返してみた。特に問題は無さそうであったが……。  一週間たち二週間が経過し、ついに月が替わってしまった。にゃあごさんからは依然として音沙汰がない。私は張り合いをなくし、フェイスブックに記事を上げるのをやめてしまった。するとなんだか急にいろいろと面倒くさくなって、朝早く起きて散歩するという日課もやめてしまった。これはにゃあごさんが「毎朝ウォーキングしている」というので自分も始めたことで、帰宅後にメッセージを送り合い、散歩中に撮った写真をフェイスブックに載せたりしてそれなりに楽しんでいたのだ。しかしにゃあごさんがいない今となっては、やる意味がなくなってしまった。
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