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にゃあごさんはある時、「新しくウエア買っちゃいました〜!!胸に猫ちゃんのワンポイント、かわいいでしょっ」と、ピンク色の上下セットのジャージを投稿していた。私はそれを着たにゃあごさんが私の隣をはつらつと歩いている姿を、つい想像してしまった。もっとも、顔写真はいっさい載っていなかったので、頭部は彼女の飼い猫であるアビシニアンの「にゃあご」で再生されたのだが。
そんな事を考えている自分が恥ずかしいやらおかしいやらで、一人でのウォーキング中に思わずニヤついてしまった。それは私にとって、楽しい時間であった。
また、読書に関してもそうだ。太宰治全集を読んだことで昔読んだ他の本を思い出し今一度読み返したくなり、芥川龍之介、谷崎潤一郎、志賀直哉などの全集を揃えた。そして「文学青年ならぬ文学老人だな」などと自嘲しつつも、熱心に読みふけった。
すると若い時分には十分理解できていなかった箇所に気付いたり、逆に今読んでも再度新鮮な感銘を受けたりと、文学の面白さを再認識した。
が、これもまた読んだ本について語り合うことができる、にゃあごさんがいたからこそ成り立っていたようで、読書欲も急激に冷めてしまった。
にゃあごさんの存在が、自分にとってどれほど大きなものになっていたかを、いなくなってしみじみと思い知らされた。
こうして、色づき始めた私の毎日は、またしても色を失い味気のないものとなっていった。
ソファに座って一人ぼんやりとテレビを観ていた、そんなある日の午後。私のスマホが久し振りにピロンピロンとメッセージの受信を知らせた。私はハッとして期待に胸を膨らませつつ画面を開いた。果たしてそれは、にゃあごさんからのものであった。
私はさっそく老眼鏡をかけてメッセージを読む。しかしそこには、意外な事が書かれていた。
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