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 南那(なな)は明日、福祉施設に移り住む。管理人が常駐なので心配はない。しかし、家を出ようと決心がつくまでどれほど思い悩んできたことだろう。それを思うと、母親である私は淋しさとも嬉しさともつかない強い感情に揺さぶられるのだった。  義父母と父親と一緒にいては、傷ついた心が回復しないばかりかさらに広がる。学校にも仕事にも行けなくなり、腫れ物を扱うようにしていたが、自分でずっと何か良いきっかけはないか探していて、傷を負ったもの同士住む家にたどり着いたのである。  親としてたくさんの後悔が心をよぎる。小学生のとき相談機関につながっていたら。中学はどこか面倒見の良い私立にしていたら。むろん他の要因もあるだろうが、私の過ちによって不登校になり厳しい道を歩まねばならなかったのは事実だ。22歳にして家を出て私が寂しい思いをしたとして、当然の報いだ。南那の人生が良い方向に行くことだけが私の願い、幸せである。
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