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「お誕生日のプレゼントで迷ってて……」
「え? そうですか……」
照れくさそうに笑う和也を見て、佐代子は胸を撫でおろした。
決して悪い人ではない。まっすぐ過ぎる性格なだけだ。
それに、優しい。敬う気持ちも持っている。家族の誕生日も覚えてくれている。
「なんでも喜びますよ。でも、不器用な人だから。あまり期待通りの反応を見せてくれないかもしれません。だから……」
コトッ……。
和也が台所の脇にコップを置いた。氷一個分のお茶が、まだ残っている。
思わずコップに目がとまり、佐代子は洗い物の手を止めた。
──これを洗えと?
「あはは、僕の父もそうなんですよ。なにをあげても反応がなくて。でも、なんだかんだ言って、大事に使ってくれてるんですよね」
「……そうですか」
「はい。それじゃあ、清美と良太に相談して決めてみます。お酒にでもしようかな」
和也は最後に感謝の言葉とおやすみの挨拶だけ済ませ、その場を去って行った。
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