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小学二年生のモヤモヤ
今日の晩御飯のおかずは野菜炒めとシュウマイとサラダに味噌汁。
良太は元気よく「いただきます」と言った。
ピチャピチャピチャピチャ……ピャッ、ピャ!
和也と佐代子と清美の視線が一斉に吾郎に注がれる。
今日はタレに辛子を入れ過ぎたのか、吾郎は眉間に皺を寄せ、もう一度仕上げにピャッ! と音を立てた。
「か、和也さん。お仕事は忙しいの?」
「ええ、まぁ……」
「り、良太、今日の宿題は終わった?」
「うん、おわったよー」
何気ない会話ではある。しかし、そこには重たい空気が流れていた。誰もが読みたくない本のページを飛ばすように、その不快音がなかったことにしようと、必死に次のページをめくろうとする。
チュチュ……。
「良ちゃん!」
めくった先に、もう一枚。
佐代子が慌ててそれを視界から消し去ろうと話しかける。
「新しいふりかけ買ったのよ。食べてみる?」
普段はお弁当にしか使わないふりかけ。白米の上にちりばめられたそれは、ほんのりと鰹の香りを食卓に漂わせた。
──あぁ、また今夜もこのご飯、残すのかしらね。
そんな考えが佐代子の頭を巡る。
コトッ……。
──最後まで飲みなさいよ。
和也がコップを置く仕草に、まだ食事中なのにそんな言葉が喉に引っかかる。
そこへ吾郎の言葉が飛び込んでくる。
「清美、今日の弁当だが、昼休憩に向かいの女性社員、まだ独身でおまえと同じくらい年齢だ。明るくて感じの良い女性だが、その人もサンドイッチを食べていた」
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