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良太はふりかけご飯を食べながら父の和也を見た。明らかに不貞腐れているような表情に見える。
母の清美を見る。少し眉間に皺が寄っているように見える。
祖母の佐代子を見る。ニコニコしているが、なにがそんなに楽しいのだろうと不思議に思う。
「おばあちゃん、なにが楽しいの?」
佐代子は満面の笑みを浮かべて「なんでもないわよ」と言った。
大袈裟過ぎる笑顔だ。それが振り撒いた笑顔、ぎこちない笑顔のことくらいは良太にも見てとれた。家庭訪問で母が見せる笑顔のようだと思った。
なんなんだろうと、ハッキリしない、どこか居心地の悪い感覚が良太を包み込んだ。
そのまま、祖父の吾郎を見る。
あ……。
ピチャピチャピチャ!
タレの濃度を再調整した吾郎が、確認のため、再び音を立てた。
ピャ!
食卓に、本日二度目の緊張が走った。
──もうダメです。二回目は……。
──言うしかない。
──お父さん、それはダメよ。
大人たちのモヤモヤは限界に達していた。
和也が箸を止めたのを見て、佐代子と清美も箸を止めた。
和也より先に、一言目を出さなくてはならない。そう思いながらも佐代子と清美の頭には言葉が思い浮かばない。
なんで、こんなくだらないこと。そんな考えも頭に浮かぶ。悠々とシュウマイを食べる吾郎を、思わず睨みつける。加減が気に入ったのか、おいしそうな顔。
和也を見れば、頭の中で言葉を整頓して、息を整えているように見える。
聞きたくない言葉、見たくないシーンを前に、佐代子と清美は目を伏せた。
──もう無理。
二人が諦めた瞬間、ついに食卓に声が響き渡った。
「おじいちゃん、ダメだよ。チュチュチュって鳴らしたら!」
頬を膨らませた良太が、吾郎に向かって言った。
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