一章 クラッドストン学園

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 とはいえハンスのほうも、腕には覚えがあるつもりだった。  飛び級だ優等生だとぬかしているが、心底では格下だと判断しているように思える。  それは勝機の一つでもある。新参者だと甘く見られたままではつまらない。むしろ単純な剣技で勝負できるのは、好都合なのかもしれない。 「じゃあ、ことが大きくなる前に終わらせるぞ」  ハンスは魔剣レヴォルツに付与したマナを解放した。光は消えて、鈍色をした刀身に戻った。  心配そうに見つめているソフィの姿が視界の端に映った。彼女を不安にさせないためにも、なるべく素早く、かつ穏便に済ませたい。 「へっへっ! 生意気な優等生さんよぉ! しっかりとウチのルールを教育してやるぜ! さあ、お前ら、しっかり盛り上がれよぉ!」  周囲を巻き込んでいく、ドゥドゥ。賑やかしのほうが、才能に恵まれているのではないだろうか。  厳つい表情を強ばらせて、ドゥドゥは棒を構える。その瞬間に、ギャラリーたちがひときわ湧いた。さすがはみな軍人というところか、勝負ごとが好きな連中ばかりらしい。 「オレはドゥドゥに一〇〇〇エクス賭けるぜ!」  そんな声まで聞こえてきた。私闘での賭博は辺境の街の娯楽ではよくある話だが、たぶんここでは違反だろう。もし学園側にこの私闘がバレても、徒党を組めば逃れられると思っているのかもしれない。  二メートルほどの間隔を空け、両者は武器を構えて静止した。開始の鐘は鳴らないため、どちらかが動けば試合開始だ。  静まり返るような緊張感が、あたり一面に広がった。ギャラリーが静かになる。  空気が――変わった。  次の瞬間、ドゥドゥの棒が勢いよく突き出された。  はっきり見えた。身体を左に動かして回避する。軍服をかするように突きが通り抜けていく。  ハンスは一歩踏み出した。そして鋭くレヴォルツを横に振るう。狙いは手首だ。武器を払い落として即座に白旗を挙げさせる。  だが、無論そううまくはいかない。  ドゥドゥも瞬時に手首を返し、棒の一部でガードした。デカイ図体のわりに、動きと身のこなしは予想外に素早い。さすがに『コガネ』のナイトというところか。

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