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その日は、さすがに合わせることもなく練習を終わった。
朝宮さんを見送り、暁星と二人で下校する。
「ていうか、他校の制服の子と歩くのって新鮮だな」
「そう? タクヤの高校のもかわいいじゃん。セーラー服って」
暁星は、とても楽しそうにしていた。
彼女が言葉を続ける。
「楽譜は朝宮サンの分はもうちょっと簡単にしないとね」
「そうだな。あれは……ちょっと無理だろう。暁星、頼める?」
「へいへい。そう言うと思ってたよ。ウチはあさってまた来るからさ、その時に渡す」
「うん。分かった」
「でさ……」
暁星は急にやや低い声になった。
「朝宮サンとなんかあった?」
「え? いや……別に」
まあ色々あったのけど……大阪に行って泊まったことなど二人の秘密だ。
「そうかなぁ。前、楽器店で会ったときより距離が近いような気がした!」
「あまり変わらんでしょ」
「いや、なんというか、心の距離というか……通じ合っていると言うか——」
う……。
確かに俺もそう感じている。
完全ではないけど、なんとなく朝宮さんの考えていることが分かるというか。
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