第三章 お嬢様と初本番

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 その日は、さすがに合わせることもなく練習を終わった。  朝宮さんを見送り、暁星と二人で下校する。 「ていうか、他校の制服の子と歩くのって新鮮だな」 「そう? タクヤの高校のもかわいいじゃん。セーラー服って」  暁星は、とても楽しそうにしていた。  彼女が言葉を続ける。 「楽譜は朝宮サンの分はもうちょっと簡単にしないとね」 「そうだな。あれは……ちょっと無理だろう。暁星、頼める?」 「へいへい。そう言うと思ってたよ。ウチはあさってまた来るからさ、その時に渡す」 「うん。分かった」 「でさ……」  暁星は急にやや低い声になった。 「朝宮サンとなんかあった?」 「え? いや……別に」  まあ色々あったのけど……大阪に行って泊まったことなど二人の秘密だ。 「そうかなぁ。前、楽器店で会ったときより距離が近いような気がした!」 「あまり変わらんでしょ」 「いや、なんというか、心の距離というか……通じ合っていると言うか——」  う……。  確かに俺もそう感じている。  完全ではないけど、なんとなく朝宮さんの考えていることが分かるというか。
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