第三章 お嬢様と初本番

16/28
前へ
/161ページ
次へ
 そして、朝宮さんにも俺の気持ちが少しだけ伝わっているというか。  あの時、朝宮さんと二人で一緒に眠ったときから、不思議な感覚だ。  でも、そんなことを、俺たち二人をちょっと見ただけで分かるもんなの!?  女の子って怖いな。  俺だったら絶対分からん。  経験豊富そうな昼河だったらちょっとは分かるのかも知れないが。  そうでない男子など全滅だろう。  暁星の声は、今度はやや熱くなっている。  イライラするのではなく、こう……何か燃えるような。 「き、気のせいだよ」 「ふーん。なるほどねぇ。別に朝宮サンと付き合ってるわけじゃないよね?」 「つきあうっ? そんなわけないでしょ」 「ふふっ。そうよね。じゃあ……まだ機会(チャンス)はある……」 「ん?」  暁星は顔を上げ、両手を振ってなんでもないと言う。   「ねえ、タクヤ……来週の土曜日だけどヒマ? 買い物に付き合って欲しいんだけど」 「いいけど、何?」 「楽器店。また詳しい時間とかはラインで送るね」 「お、おう。わかった」 「約束だよ?」  暁星は弾ける笑顔で、そう言ったのだった。
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加