第三章 お嬢様と初本番

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「そっか。竹居君、私……置いて……行っていいよ……。寝て……待つから……」  寝てしまった。  時々見回りの先生も来るし、このまま置いていっても問題無いだろう。  でも、このままじゃ風邪を引きそうだ。  そっと早希ちゃんに俺のカーディガンを掛けてあげる。  もう暖かくて必要ないとは思いつつ、俺は鞄にカーディガンなどをいつも入れるようになっていた。  そして旧校舎の音楽室に移動する。  誰もいない音楽室。  俺だけの音楽室。 「こんなに静かだったっけ……?」  楽器を出して、少し吹いてみる。  さっそく発表会で演奏する曲を吹いてみる。  ……楽しいは楽しいけど、味気なかった。  いつもは、側に朝宮さんがいて。  俺が吹いた音をにこにこして聞いてくれていたり、楽器の練習をしたり。  いつのまにか俺は、朝宮さんが近くにいるのを当たり前のように思っていたのだろうか。  結局それなりに吹いて、下校の時間になった。  外はまだ夕暮れ時だ。 「お、竹居じゃん」  校門付近に昼河と早希ちゃんがいた。 「やあ」 「竹居君、ありがとう」
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