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早希ちゃんがカーディガンを手渡してきた。
うっすらと彼女の匂いがついているような気がするけど……俺は特に気にせず鞄にしまう。
「っていうか。竹居さぁ……そういうとこだぞ」
「へ?」
「お前がモテるって言っているのは、そういう微妙な気遣いがだな……」
「へいへい」
俺は昼河の冗談を受け流す。
そこに——俺がさっき感じていた寂しさを吹き飛ばす声が聞こえた。
「竹居君! ああ、間に合わなかった……」
「朝宮さん? 休みだったんじゃ?」
そこには私服姿の朝宮さんがいた。
なぜだろう。
目頭が少し熱くなった。
一方、彼女を見て「おっ。私服姿の朝宮さんなんてレアすぎる」なんて言った昼河が早希ちゃんに鉄拳を受けていた。
「はい。楽器一緒に練習したくて急いで来たのですが——間に合わなかったようですね」
がっかりするように肩を落とす朝宮さん。
何か声をかけようと思ったが、どうしてか言葉がつっかえて出て来ない。
っていうか。
この光景……見られてしまったな。
「ははぁ……。そういうわけか竹居」
「なるほどねぇ」
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