第三章 お嬢様と初本番

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 早希ちゃんがカーディガンを手渡してきた。  うっすらと彼女の匂いがついているような気がするけど……俺は特に気にせず鞄にしまう。 「っていうか。竹居さぁ……そういうとこだぞ」 「へ?」 「お前がモテるって言っているのは、そういう微妙な気遣いがだな……」 「へいへい」  俺は昼河の冗談を受け流す。  そこに——俺がさっき感じていた寂しさを吹き飛ばす声が聞こえた。 「竹居君! ああ、間に合わなかった……」 「朝宮さん? 休みだったんじゃ?」  そこには私服姿の朝宮さんがいた。  なぜだろう。  目頭が少し熱くなった。  一方、彼女を見て「おっ。私服姿の朝宮さんなんてレアすぎる」なんて言った昼河が早希ちゃんに鉄拳を受けていた。 「はい。楽器一緒に練習したくて急いで来たのですが——間に合わなかったようですね」  がっかりするように肩を落とす朝宮さん。  何か声をかけようと思ったが、どうしてか言葉がつっかえて出て来ない。  っていうか。  この光景……見られてしまったな。 「ははぁ……。そういうわけか竹居」 「なるほどねぇ」
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