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朝宮さんは、俺の顔を見て心配そうな顔をした。
「大丈夫」
「大丈夫って、無理したらいけないと思います。今日はゆっくり休んでくださいね。約束ですよ?」
「本当は……本当はね、朝宮さんの顔を見れて良かったって思って、嬉しくて涙が出そうだった」
本当の気持ちを、つい口に出してしまった。
最近の俺ちょっと変かも。
「え。ええっ?」
「あ、いや」
俺は恥ずかしくなって朝宮さんから目を逸らす。
「……竹居君」
「ん?」
しなやかな手のひらが頭に触れるのを感じた。
不思議な感覚につられて前を向くと、そこには頑張って背伸びして俺の頭を撫でている朝宮さんの姿があった。
「んんん」
「朝宮さん?」
「ど、どうでしょうか? いかかでしょうか?」
頭に柔らかい動きで触れる手のひらから、彼女の優しい気持ちが伝わってくる。
同時に背伸びして頭を撫でてくれる朝宮さんが、あまりに可愛らしく、少し笑いそうになってしまった。
俺は我慢しつつも、しばらく、彼女のなすがままになることにしたのだった——。
翌日の放課後の音楽室。
ついに三人が楽器を持って揃った。
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