第三章 お嬢様と初本番

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 最初だけ音出しと基礎練をして、早速合わせてみる。  朝宮さんは、さすがにいきなりできるわけは無いので、吹ける音だけ出してみるということにした。 「まずはチューニング(※)だけど。朝宮さんが一番音程がいいな。暁星は高いぞ」 「へいへい」  ※楽器の音程は気温や息による楽器の暖まり具合によって微妙に変わるため、それを一定の高さに合わせること。  そして、実際に演奏してみる。  するとあっさりと一発で通すことができた。 「最後まで通ったね」 「???? 私はさっぱり……でした」 「朝宮さんは落ちなかった(※)ね。よく吹けてたよ。予想以上だった」  ※落ちる:演奏中、楽譜でどこを演奏しているのか分からなくなること。復帰できればいいが、できなければ何もできなくなる。曲を覚えられていない時によく起きて、結構焦る。 「そうでしょうか……?」 「うん。あと二ヶ月あれば、問題無くできると思う」 「よかった……」  俺と朝宮さんが話していると、ジト目で暁星が話し始めた。 「この曲、前半……前奏からAメロが一番むずかしくない?」
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