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今の俺は、魔法が使えなくなっている。魔法学校の教師だっていうのに! なんで大事な日に限って、ス魔法がぶっ壊れたんだ?
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」
校長の話も頭に入ってこない。そんなことよりス魔法、ス魔法はどうした?
「当校の校訓についてですが」
ス魔法は人の魂、魔力の源が実体化したものだ。自分の分身でもあり、生涯の相棒でもある。
子供のころは折り畳み式のガラパゴス型で、ボタンも1234567890まであったな。
「過去にとらわれず、未来に向かって進んでほしい」
今より不便だったけど、壊れたことは一度もなかった。ボタンが1つだけの、平たい最新版にアップグレードしても、ずっと順調だったのに。
「学校生活では嬉しいことも、つらいこともあるかと思いますが」
今のス魔法は、ただの黒くてちっちゃい板だ。あーちくしょう!俺の将来を返せ!
「それでは生徒の皆さん、教室に移動してください。教師の皆さんは前に集まって」
気づいたら、校長の話が終わっていた。
生徒はしゃべり始め、隣のクラスの三つ編み女子は自撮り棒を出している。さっそくス魔法にくっつけてるな。
「あ、ねえねえ写真撮ろ」
「こらそこ!」
筋肉マッチョのプロテ先生が、びしっと指をさす。早押しクイズみたいな勢いだ。
「式はまだ終わってないぞ! ス魔法をしまえ!」
「チッ、うるせーセンコー」
「コラッ」
バカ三つ編みでもス魔法がつくのに、どうして俺のだけ。昨日はちゃんと動いてたのに!
「静かに教室へ移動しろ! はー、全く近頃の子供は。グール先生、大丈夫ですか」
筋肉マッチョのプロテ先生が、声をかけてくれた。
「大丈夫です」
「顔、真っ青ですよ」
当たり前だ。ス魔法が機能しなかったら、誰だって青ざめる。ん? 校長。
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