無力な入学式

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無力な入学式

 2021年4月、桜の咲き乱れるころ。国立マジルカ学院高等部にも、入学式がやってきた。  体育館には、ベージュのブレザー姿の新入生がずらりと並ぶ。男子は紺色チェックのネクタイにズボン、女子は同じ柄のリボンとスカート。  新しい制服が初々しい。俺のスーツも新品だから、なんだか親近感がわく。  昨日頑張って、パイプ椅子を並べまくった甲斐があったな。  俺は体育館の壁にそって、この景色を眺めていた。40人以上の長い列が、クラスごとに7組並んでいる。4人までの短い列は10組か。  マジルカ学院のクラスは2種類ある。長い列は一般的な普通科。短い列は、実力者しか入れない特級科だ。 「高等部特級科1年M組の担任は、グール先生」 「よろしくお願いします」  俺はクラスの列に向かって、にっこり笑った。特級科か。  表向きは、エリート生徒の少人数育成クラス。順調に1年勤めれば、出世は間違いない。  だが実は、特級科の生徒も2種類いる。  優秀な生徒か、とてつもない非行児童。 「優しそうな先生だね」 「うん」  一番前のアルマくんは、後ろの女子としゃべってた。  女子の髪型はポニーテールの縦ロールで、白いレースのリボンをしてる。きっと裕福な家の子だろう。 「油断すんな。上っ面のいいやつに限って、ろくなのがいない」  3番目の黒髪おかっぱは、俺を見るなり顔をしかめた。よく見たらブレザーを閉じていないし、紺色チェックのネクタイはどこいった? 「あー眠っ」  一番後ろの金髪は、寝ぼけ眼をこすっている。校長先生の話の時から、頭ががくんがくんしてたよな。少し黒めの頭頂部が、よく見えてたぞ。  優等生か? 不良か?  どっちでもいい。教師はクラスを選べない。降りかかった運命で、やるしかないんだ。それより重大な問題がある。  今朝からス魔法(スマホ)が動かない!
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