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数日後、レオと約束した通り櫂はホノルル警察署にいた。殺害現場にあった花を受け取るためだ。
署内の受付には、前回と同じように白髪の男性が座っている。確か、マオリとレオが呼んでいた人だ。
「アロハ……えっと、マオリさん」
「やあ、カイ! アロハ。私の名前を覚えてくれたなんて嬉しいね。じゃあレオを呼ぼうか……と、その必要はなかったようだな」
「えっ?」
マオリはかいにウインクをすると楽しそうに目線を左に向けた。
櫂がつられて目線を左に送ると、見慣れた長身がこちらに向かってくる。
「カイ!」
「あ、レオ!」
「悪い、待たせてしまったか」
「いえ、ちょうど来たところです」
「じゃあ、行こうか」
レオに連れられて前回と同じフロアまでエレベーターで上がっていく。
3階に着くと、レオのデスクまで案内された。
レオのデスクはフロアの左奥にあり、ちょうど朝日が差し込む南側だ。少し乱雑に置かれた資料の横に、櫂が執務室で活けたのと同じ花が花瓶に差してある。
「やあ、カイ!」
「こんにちは」
レオの隣のデスクに座るライアンと挨拶を交わすと、次々に他の捜査官も挨拶をしてくれた。
みんな穏やかで優しそうだ。櫂も一人一人にできるだけ笑顔で挨拶を交わした。
一応事件関係者だが、今はレオの友人でもある。彼の同僚に対して粗相をしたくなかった。
「ああ、ほらみんな挨拶も終わったし、もう満足だろう。仕事に戻れよ」
何故だかバツの悪そうなレオの一声で、捜査官のみんなはそれぞれのデスクに戻って行った。
なぜだろう、どことなくみんなニヤニヤと笑いを堪えている感じがするが……。
(僕の勘違いかな……)
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