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 櫂自身もミモザとかすみ草はとても好きな花だ。  可憐で、控えめで、愛らしい。  でも、支配人の陽気な性格やハワイの青空には似合う花とは思わない。  やはりここはハイビスカスやプルメリアが似合う場所なのだ。  白いチューリップだって、もし櫂が自由に選んでいいのならオレンジや濃いめのピンクを選ぶだろう。  ずっと抱えていた違和感はそれだったのだろうか……。  ふと、先日ショップでリースを注文しにきた姉妹の言葉が頭をよぎる。 『花言葉を素敵なものにしたくって……』  支配人が指定した花の花言葉はなんだったろうか。 「かすみ草は、永遠の愛。そうして無垢の愛……ミモザは……」  櫂が考え込んでいると、レオが声をかけてきた。 「カイ、大丈夫か? ずいぶん時間がかかっているが」 「あの、レオ。このかすみそうなんですが」 「うん?」 「花言葉は永遠の愛、無垢の愛です」  レオはちょっと面食らったようだったが、耳を傾けてくれた。 「ミモザは、秘密の恋」 「……じゃあ、この白いチューリップは?」  レオにも櫂の考えていることが分かったのか、興奮を抑えるように尋ねる。 「白いチューリップは」  櫂はレオに向き直って告げた。 「白いチューリップは、許しを乞う」
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