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7
櫂は自室でひとり、かすみ草の花を摘んでいた。ドライフラワーにするために、少し痛んで黒ずんでしまった部分を取り除かないといけない。
かすみ草と白チューリップは花束状にして、ミモザはリースにするつもりだ。
かすみ草の横にはすでに丸く形成したミモザが机に置かれている。
ホノルル警察署でレオと花言葉に隠された支配人の思いを発見してからかれこれ一週間が経とうとしている。
本当は、警察署から戻ったら、すぐに花を乾燥させるつもりだった。
ところが、どうにもやる気が起きなくてそのまま花瓶に刺してしまったのだった。
今日も本当は作業する気はなかったのだが、いい加減処理をしないと花が枯れてしまう。
櫂は重い腰をようやく上げて作業にかかった。
「どうしてこんなに気分が落ち着かないんだろう」
1週間、毎日部屋に飾られた花を見つめつつ自問自答するけれど、心の中はモヤがかかったようにはっきりとしない。
「ジェイクは、あの写真の男の人が好きだったのかな」
一度しか見たことがない写真だったが、櫂は青年の顔を不思議とはっきりと覚えていた。
首も肩も細い人だった。茶色い髪の毛はゆっくりとウェーブがかかっている。
目を瞑って眠っているらしいのに長い睫毛とすっきりとした鼻梁で、美しい人なんだと分かった。
「あの人は、なんて名前なのかな」
会ったこともない青年に、妙な親近感があった。
「ジェイクと恋人なんだとしたら、あの男の人もジェイクが好きだったのかな……」
そこまで考えて、ハッとした。そういえば2人とも男性だと言うことに今更気がついたのだ。
でも、違和感はない。写真の青年は美しいし、ジェイクの魅力は櫂もよく分かっている。
「そっか、男性同士でも恋人になることはできるんだよね」
独り言を言いつつ、かすみ草の花摘みも完成して、部屋に貼ったロープに花を吊るした。
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