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 ◇◇◇ side レオ  レオはクラブの隅にあるソファ席に、不機嫌を隠すことなく座っていた。  カイとのデートをお膳立てした見返りにと、ライアンに強引に連れてこられたのだ。  今レオがいるクラブはカイマナビーチから少し歩いたところにあり、ワイキキとは違って地元の若い男女がよく集まる店だ。  クラブの扉を開けた瞬間に、耳をつんざくようなクラブミュージックの音量にレオは心底辟易した。  そう大きくはないフロアで音楽に身を任せる者たちの、あけすけな性への欲望に吐き気がする。  何度踵を返そうかと思ったかしれない。  それでもレオがギリギリ我慢してこの場に留まっているのは、ライアンへの義理を返すため、ただその一点のみだ。  軽率で騒がしい男だが、一方で友情に篤く優しい心持ちのライアンのことは嫌いではない。  ホノルル警察でライアンと出会って5年、仕事でもプライベートでも気の合う大切な相棒だと思っている。  とは言え……。 「気分が悪い」 「えっ、もう? まだここにきて30分だぞ」 「俺はここでやり過ごすから、お前は好き勝手やってさっさと相手を見つけてくれ。そしたら俺は帰る」 「無茶言うなよなぁ。俺だって誰でもいいってわけじゃないんだぜ」  2人で言い合いを続けていると、女性4人に話しかけられた。  どの女性たちもほとんど水着と変わらないような露出度の高いトップスに短いスカートを履いている。  彼女たちの人工的な香水の香りについ顔をしかめてしまったが、隣のライアンは気にすることなく話を続けていた。  どうやら気に入った子がいたようだ。  レオも色々と話しかけられたが、なんとか相手の失礼にならないように少し微笑むことしかできない。  少し前までは、レオも同年代の男性と同じように女性たちの露出過多な服装や香水は決して嫌いではなかった。  積極的ではなかったが、ライアンや友人たちとクラブやバーに行って出会いを求めたことだってあるし、ワンナイトを楽しんだ女性も1人や2人ではない。  それなのに、もうレオにこの場の雰囲気は耐えられるものではなくなっていた。  彼女たちに何も感じない。  こんな場所に来てまで頭の中で想うのは、もう1人だけなのだ。  (カイ……)  幸いライアンは楽しく女性たちとおしゃべりをしている。  自分の役目はもう果たしたと言っていいだろう。  レオはライアンの肩を叩くと、彼女たちにわからないよう告げた。 「悪いが限界だ、俺は抜ける」  ライアンの返事を待たずにレオはクラブの扉を開けた。
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