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レオが夜のカイマナビーチを散歩していると、砂浜の先に誰かが座っているのを見つけた。
「こんな夜に一人か。珍しいな」
つい職業柄、余計な心配をしてしまった。カイマナビーチには自分以外にも2、3人、夜の散歩を楽しんでいる人影が見て取れる。でも、あそこで座っている人影は、妙に幼い。ひょっとして未成年ではないのだろうか。
非番とは言え、警察官として夜の11時に一人でいる未成年を放ってはおけない。何か事件に巻き込まれてからでは遅いのだから。
レオはそっと人影に近づいていった。もし様子がおかしいようなら署に連絡をするつもりでジーンズのポケットのスマホを取り出そうとして、驚いた。
浜辺に座っていたのは、紛れもなくカイだったのだ。
「カイ?」
「え?……あ、レオ! どうしてここに?」
びくりしたのか大きな瞳をさらに大きくして見つけてくるカイに、愛しさがこぼれ落ちそうになってレオはぐっと奥歯を噛み締めた。
「俺はライアンに付き合って飲んでいたんだ。君こそこんな時間にどうしたんだ?」
「ちょっと寝れなくて、夜の散歩です」
いたずらが見つかったようにはにかむカイは、月明かりに照らされていつも以上に儚く映る。レオは慌てて櫂の横に座った。そうでもしないと海にさらわれてしまうと思ったのだ。
「横に座ってもいいかな」
「もちろんです」
返事を待たずに座ってから、極力カイの方を見ないようにレオは波を見つめた。
(そうでもしないと、抱きしめちまいそうだ)
カイに気づかれないよう静かに深呼吸をしながら、潮の香りを肺に入れていく。
「ふふっ」
隣で不意に、カイが笑った。
「ん?」
「ああ、すみません。レオの髪に挿してある花が可愛らしくて、つい」
そう言えば、さっきナウパカの花を一輪髪に挿したままだった。
「その花……ナウパカですか? マノアフォールズで一緒に見た……」
「ああ、そうだ。でもこれはナウパカ・カハカイ。”海のナウパカ”だ。一緒に見たのはナウパカ・クアヒウィと言って”山のナウパカ”さ」
「2種類あるんですね……あ、ちょっとだけ花びらの形が違いますね」
レオは自分の髪からナウパカの花を取ると、カイの左手を掴んで掌にのせた。
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