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レオと別れて駐車場に止めてあった自身の車に飛び乗ると、櫂は慌ててエンジンをかけて自宅に向けて急発進させた。
身体中が熱い。
ハンドルを握っている右手にさっきまでレオの唇が触れていたかと思うと変な声を上げながら爆発してしまいそうだった。
「ど、どうしよう……」
どういうわけか、ライアンが現れたことで慌ててサヨナラを告げてしまった。レオにもライアンにもひどい態度をとったことは間違いない。
どうしよう、どうしよう、と何度も頭の中で考えても答えは一向に浮かんできてはくれない。
櫂の運転する車は猛スピードで自宅についた。心臓は相変わらず苦しいままだ。叔母夫婦はもう寝ているのか、電気が消えていた。
こんな真っ赤な顔を2人に見られなくて済んだのはよかった。今、何か質問されてもうまく切り返せる自信がない。
「と、取りあえず寝よう」
急いで自室に戻って寝巻きに着替えると、ベッドに潜り込んだ。さっきまでのザワザワとした気持ちは霧散したが、別の感情が櫂を昂らせてしまって一向に寝付けない。
ベッド脇の机に目をやると、さっきレオに渡されたナウパカの花が水を張った小さな平たい器の上に浮かんでいる。どさくさに紛れて、そのまま手に持って帰って来てしまったのを、無意識のうちに活けていたのだ。
「なんでレオは、僕の手にキス、したのかな」
ベッドの上で自分の両手をかざしてみた。
これといって綺麗でもないし、花を扱う関係で手は常に荒れ気味だ。
それなのに、レオのキスは繊細なガラスを扱うように優しかった。
「ひょっとして、おまじないか何かなのかな」
ナウパカには恋人同士の伝説があると言っていた。もしかしたら、恋が叶うおまじないでもあるのかもしれない。
そこまで考えて、櫂はハッとした。
そう言えば、後から浜辺に来たライアンと一緒に4人ほど女性がいた。きっとレオがビーチに来るまで一緒に飲んでいたのだろう。ひょっとしたら、あの中に意中の女性がいるのではないだろうか。
「レオ、好きな人がいるのかな」
そう考えたら、唐突に胸が苦しくなった。
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