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レオとビーチで別れてから、早くも2週間が経過した。
櫂は、アカオホテルのフラワーメンテナンスのために車を走らせている。
時刻は午後7時。
いつもメンテナンスは朝早くに行うが、今日はどうしても都合がつかずに夜になってしまった。
「明日でも大丈夫よ」
と、いまやアカオホテルの責任者となったマネージャーのレティシアがそう気遣ってくれたが、花の具合が気になるので夜にしてもらったのだった。
夜のホノルルをホテルに向かって走っていると、レオとビーチで会った夜のことを不意に思い出した。
あれから何となく櫂はレオを避けてしまっている。
もちろんレオに落ち度があるわけではない。原因は100パーセント櫂の気持ちの問題だ。
”レオに好きな人がいるかもしれない”
あの時、そう思ってしまってから櫂の頭の中はそのことでいっぱいになってしまったのだ。
『自分がレオと食事に行ったりトレッキングをした事はレオの恋路の邪魔になっていたのではないか』
この考えが、櫂の頭を痛くした。
思い返せば、レオと知り合ってからずっと彼の貴重な休みの日はほとんど必ず二人で過ごしていたからだ。
自分からお願いして友人になったもらった櫂だが、いくら友人とはいえお互い大人だ。小学生じゃあるまいし、休日を一人の友人とばかり遊ぶと言う人はそうそういない。
それにレオは男の自分から見ても恐ろしくハンサムで魅力的だ。女性が放っておくはずがないではないか。
きっとレオも気になっている女性とデートしたかったに違いない。
それが、事件で櫂に出会ってしまったせいでその時間がなくなってしまった。レオは優しい人だ。きっと櫂を見て危なっかしい奴だと思ってかまってくれていたのだろう。
櫂はそんなことを考えもせずに、友人になれた嬉しさからレオの誘いに意気揚々と乗っかっていたのだから、今思い返しても恥ずかしすぎてレオに合わす顔がない。
「僕ってほんと、どうしようもないな」
ここ2週間の櫂は、自分の行為を思い出しては恥ずかしさに悶えてレオに対して大きな罪悪感を抱く、これをぐるぐる繰り返してばかりなのだった。
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