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プロローグ 櫂side①
今日もワイキキは雲ひとつない、抜けるような空だった。
絵の具をたっぷり含ませた筆で塗ったような濃いブルーに、椰子の葉の緑が鮮やかだ。
ワイキキのメインストリートであるカラカウア通りをミニバンで走りながら森本櫂(もりもとかい)は小さくため息をついた。
日本から叔母夫婦の家に引き取られて6年、いまだにハワイの空は彼には眩しすぎる。
ちょうど信号で止まると、歩道を横断していた派手なビキニ姿の女の子2人が車中の櫂にアロハポーズで挨拶をしてきた。よく”アロハー”と言いながら親指と小指を立てるお決まりのあのポーズだ。
あの子たちは確か先週、櫂が手伝っている叔母夫婦のフラワーショップに花を買いに来た子達だ。
最近やたらと若い子たちが櫂の店番中に花を買いに店に来る。
時には食事やパーティーに誘われたりもしたが、その度にやんわりと断っていた。
叔母と叔父から、キュートな男の子がフラワーショップで働いていると近所で話題になっていることを教えてもらった時は心底驚いたものだ。
(キュートな男の子って…僕もう21歳なんだけどな)
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