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「いやあ、無事にお付き合いできて良かった良かった!」  ライアンが祝福してくれて、櫂は真っ赤になりながらもお礼を言った。  ここはホノルル警察署の一階待合室。  今日はレオが早番で夕方には上がると言うので署の前で待ち合わせをしていたのだが、外で待っていたところを同じく早番のライアンに見つかって署内に引きずり込まれてしまったのだ。 「ありがとうございます。まだ実感もないですし、人に話すのは恥ずかしいんですけど」 「ははは、初々しいなぁ。付き合ってどのくらいだっけ」 「もうすぐ一ヶ月です」 「一番楽しい時期だよねえ。あれやこれや、ねえ」  櫂に自販機で買ったコーヒーを渡しながらライアンにウインクをされた。 「はい、とっても楽しいです」  確かにこの一ヶ月のレオとのデートはとっても楽しい。  お互いの休みが合ったのは3回だったが、トレッキングに行ったり海岸沿いを散歩したりして過ごした。  二人の幼少期の話をしたり、好みの音楽や本の話をしているとあっという間に時間が過ぎてしまう。  レオは必ず櫂を自宅まで送ってくれて、別れ際に唇に触れるようにキスしてくれる。  デートをした夜はレオの唇を想像しながら悶々として寝れなくなってしまうのだけが悩みの種だ。  今もレオのことを考えるだけで心がポカポカとしてくる。  そして今日はついに、レオの家に招待された。  なんと手料理を振る舞ってくれるという。  レオの家はどんな風かな、どんな料理を作るのかな、などと考えるのが楽しくて仕方がない。  櫂がうきうきとした気持ちでいると、ライアンに突然肩を寄せられた。 「正直どうよ、レオのやつ。実はちょっとだけ心配なんだよね。猛獣の如くがっついて君に無理させてんじゃないかってさ」 「え、猛獣? がっついて?」 「親友のベッドシーンを想像する趣味はねえんだけどさ、あいつ凄そうだもんなあ。体キツかったらちゃんと嫌だって言うんだよ」 「べ、べッド?!」 「あれ? 外見に似合わず意外と淡白だったりする?」  ライアンの直接的な言葉に、流石に何を言われているのか分かって櫂の頭はパンク寸前だ。 「わ、わかりません!」 「そんな恥ずかしがらなくてもいいのに、奥ゆかしいなぁカイは」 「だってまだ一ヶ月ですよ? 手を握ったり、キ、キスくらいならしましたけど……おうちにお邪魔するのも今日は初めてで」 「……」 「あっ、レオのおうちにライアンさんは行ったことありますか? どんな感じだろうなって昨日から想像してて、とっても楽しみなんです」 「……うぅ」 「えっ? ライアンさん大丈夫ですか?」  しばし無言で目を見開いていたライアンが、低く唸りはじめる。 「なんてこった、二人して高校生かよ。いや、いまどき高校生でもここまでじゃねえだろうが」 「あ、あの」 「カイ、俺は今から君に話があります。人生の先輩として、男同士の恋愛経験がある人間としてのアドバイスだ」 「え、は、はい」 「君は恋人の家に行く意味が正しく分かっているかな?」  レオの家にお邪魔する意味……。 「レオの作ったご飯を一緒に食べるため……?」 「くっそ! かわいい! かわいいがそれだけじゃないんだよ、カイ。つまり、レオの家にはベッドがあるだろう。今日君はそのベッドでレオと寝ることになるわけだ」 「ねっ寝る?!」 「寝る。恋人同士が一つのベッドで寝る意味はさすがに分かるね。それでだ。君は」  ライアンはビシッと人差し指を目の前に突き出した。 「君はそのかわいい小さなお尻の穴にレオの大きいものを受けいれ……ぎゃあっ」 「ラ、ライアンさん?!」  櫂の視界からライアンが消えたと思ったら、後ろにレオが悪魔のような形相で立っていた。  どうやらライアンはレオに椅子から引き摺り下ろされたらしい。 「ライアン貴様、どうやら死にたいらしいな」 「よ、ようレオ。俺はただカイに手ほどきをだな」 「口を閉じろ。それとも銃口をねじ込まれてえのか?」  ライアンはふるふると首を振りながら両手を上げて降参ポーズをした。 「カイ、すまない遅れて。このクソ野郎に何か嫌なことをされてないか」 「いえ、全然! 一人で待っているところを構ってくださって」 「ほらみろ、俺は無実だ! カイ、こいつに無体な真似されたら俺に連絡してね」  床から這い上がったライアンが不満げに口を曲げるのがおかしくて、櫂はクスクス笑った。

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