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ひょろ長い体に浅黒い肌、日本企業に就職しにくそうな風貌―――男は松蔵の同居人とよく似ているが、秦であって秦でなかった。
ブリーチしすぎて黄緑色に褪せたアシンメトリーなソフトモヒカン、胸から手まで彫り込んだトライバルタトゥー、右頬に残る古い火傷の痕は、秦と同じだ。違うのは、大量のピアスホールにフープやトンネルではなくトンボ玉のような工芸品を垂らし、首や腕に貝殻らしき工芸品を巻き、おまけに革の眼帯を嵌めていることだ。
更に、秦も常々薄着ではあるが、この男は限度を超えている。
上裸はまだしもズタズタの腰帯をローライズしすぎて股間が見えそうな上、よれよれのサルエルの両サイドがだいぶ裂けていて太腿は丸見えだ。ノーパン健康法を実践中なのか?
だが、最も恐ろしいのは男が古めかしく汚らしいモップを担いでいるところだ。あんな物この家には置いていない。男が持ち込んだ小道具だろう。秦に化けた強盗なのだとしたら、神業レベルの整形だ。だが本人ではないと松蔵の感覚は告げている。
観察に気を取られていたら、男がゆらりと揺れ動いた。
はっと松蔵は我に返った。
やばい逃げよう。状況説明が厄介だが110番するしかない。
「これ、」
踵を返す直前に、ぼそっと話しかけられた。驚いたのは男が日本語を喋ったせいだけではない。秦とまったく同じ声だったからだ。
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