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「私、神谷さんに出逢えてよかったです」 一緒にショッピングモールに出かけた帰りに自然に神谷さんに話していた。 もちろん。突然言われた神谷さんは、少し驚いていた。ですよね。そうなりますよね…… 私は昔の話を神谷さんに話そうと思う。 「神谷さんにお話したいと思います。私の過去の事……」 私はそこまで話したもののそれから先の言葉が出てこない。どこから話せばいいのかな…… 神谷さんの事が好きなのかも?と感じてから 神谷さんが一緒に歩いていきたいと言ってくれてからも、本当に寄り添ってもいいのだろうかとすごく心配で、また昔のように急にそばにいたのにいなくなってしまうんではないかと不安になる……次に同じ事が起きたら、私はもう耐えられない。きっと一緒についていくと思う。 「花さん……大丈夫? 全然無理しないでいいからね。昔の花さんの事、教えて貰えるのはうれしいよ、もっと君の事知りたいから、でも。無理してるようなら言わなくてもいいから」 「はい。ありがとうございます 、私も出来るだけ少しずつ伝えていきます」 そう言って私は神谷さんに伝えていくことにする。 「私は、七年前に大切な人を亡くしてるんです。それから怖くなってずっと一人でいました。高校を卒業してから地元にいると辛いからこっちに出てきて就職もしたんです」 やっぱり思い出すと涙が出そうになる。タクル……もう前に進んでいいのかな…… ? タケル…… 「そうだったんだね。辛かったよね、僕がそばにいてあげるから大丈夫だよ。安心して」 神谷さんに暖かい言葉をかけて貰って私は堪えていた気持ちが一気に溢れ出てしまった。 神谷さんは、私を抱きしめて背中をさすってくれていた。やっぱり、神谷さんのこと、私は、神谷さんと一緒にいたい。 タケル? いいのかな? 私、幸せになっても…… 少し落ち着いてからタケルのこと、タケルが事故で死んでしまったこと、全て話した。 タケルが亡くなってからは、どこかに出かけるとか、もちろん恋愛は全然無理だったこと。 最近になって昔の私に戻ってきた感じがすること。神谷さんに一気に話していた。 神谷さんは頷きながら深く聞いてくれていた。 神谷さんの心のあたたかさを感じて、このまま神谷さんに甘えていいかな?そんな風に最近は思う。 ショッピングモールの時も気がつくと素の自分が出ていた気がする。 昔、タケルと付き合ってた時も時々、意地悪をしてからかって、何も考えず思っていることを言ってたっけ? 昔のように神谷さんにも何も考えずに話せる。 「僕は、何があっても君を悲しませたりしないよ。約束する」 私の話を全て聞くと神谷さんはそう言って約束してくれた。 何故か神谷さんの言葉は私を安心させてくれて信じることが出来る。神谷さんは私の嫌がることもしないし、私の想いを優先してくれる人。 自分のことよりも私の気持ちを何より優先にしてくれる優しい人。 だから…… 神谷さんのことを信じてもう一度前に一歩踏み出してみようと思う。 「ありがとうございます。私も…… 神谷さんを信じてもう一度前に進んでみたいです」 私は決心して本当の気持ちを打ち明ける。 「わかったよ。僕と一緒にこれから歩いて行こう。愛してるよ」 彼は私の額にそっとキスをする。 「私も大好きです」 初めて神谷さんに自分の気持ちを伝えるのに『愛してる』はまだ恥ずかしくて言えなかった。これから、言えるようにしていこう。 私達は、今日から付き合うことになった。私達は付き合ったんだからと、呼び方をかえることになって、花、新と呼ぶことになった。二人の癖で神谷さん、花さんって呼ぶことがあったから 呼んだら罰金か一週間何でも言う事を聞くことになった。 「花 」ちょっと照れながら彼は私の名前を呼ぶ。 「新」私も負けずに呼んでみる。 「ははは」 二人で顔を見合わせて笑った。 「急に呼びすてって恥ずかしくて何かこしょばい感じがするね」 私は、このほっとした空気感がとても好き。 ああ、幸せだな、ってすごく感じて胸がいっぱいになるというか暖かく感じる感覚。久しぶりに思う。 タケルがいた時も毎日のように感じてたな。もう、恋もしないし、またこの明るい世界へ戻って来られるとは考えたこともなかった。 タケルが居なくなってから私の世界は暗闇に覆われて時間も止まってしまっていたのに、再び、新と出逢えて動き出したんだと思う。 新とは、週末や平日の仕事終わりに早く終われば会う約束をしていた。週末になるとどちらかの家に泊まって休日を過ごした。 休日はゆっくり寝ていて昼位からご飯を作って食べて家で過ごしたり、外に出かけてランチを食べたりした。 そうやって二人の時間を育んだ。 蓮にも付き合い初めた時に二人で報告した。 私は、少し気まずく感じていたけれど、新はストレートに「僕達付き合うことになったから」 と話した。それも、三人で会ってるときではなくて『ボヌール』で私達が食事をしている時に 仕事中の蓮へ伝えた。蓮の表情は、一瞬顔色が変わったがすぐにいつも通りに戻っていた。 「よかったじゃん!クソ〜 俺の花をとられて悔しい〜」といつもの明るい彼だった。 大丈夫かな? と考えつつも二人が普通にしているから何だか初めて新と『ボヌール』へ来た事を思い出す。 少し、二人の仲がこじれてしまったらと心配していたけれど、余計な心配でよかった。二人はやっぱり、仲がいい。お互いが信頼していて性格もあうから少しのことではこの友情は壊れないってことなんだね。私の心は内心ソワソワしていたからすごくほっとしている。 私達は、それからもよく『ボヌール』へ行くことが多くなった。 新が私が『ボヌール』が好きなのもあるし、二人の家からも近いし、料理も言うことなし! ってなったら、外に食べに行こうってなった時は、ほぼ『ボヌール』に行く。 最近は、「おい、お前達本当に暇だな、それとも俺に会いたくて来てるのか? 先週もきたよな? どうした?」なんて蓮に冷やかされて。 「良いだろ! 別に」と新は答えているけど、そう言われたらそうだ!って言われて気がつく。 「ホントだ。 新、私達毎週来てるね!言われなかったら気がつかなかったかも」 みんなで「ははは」て笑う。 私達は相当『ボヌール』が大好きなんだな。 『ボヌール』愛が止まらない! なんて心の中で考えていた。お店の外をみると 春の香りがする。 春は綺麗で昔は一番好きな季節だったけど、タケルが春に居なくなってから一番嫌いな季節になった。春の季節は落ち着いていてもどうしても不安定になる。 どうしても、表情が強ばってしまう…… 「花? どうしたの? 大丈夫……?」 少し思い出して表情に出ていただけでも新はすぐ気がついてくれる。 今年は、新がいてくれるから大丈夫かな? 新が隣りにいてくれるだけで心強く感じる。 タケルの命日になったら、お参りについて行って貰おうかな。新がいたら大丈夫な気もする。 七年前、タケルが居なくなってからお葬式もお墓参りも行ったことがなかった。 私を支えてくれる人と一緒なら乗り越えられる気がするし、タケルに前に進めることが出来たと、この人と前に進んで行くと報告もしたいから。 私自身の心のケジメ。一つの区切り。
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