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花はどんなお店に行きたいか、口実に話したいから電話した。 三人で今週末飲みに行く事になり、お店はどうしようか迷う。だいたいの女性はオシャレなお店がいいと思うけど、それは二人になった時にしようと考えていたし、新と三人なら、俺達のいつもの居酒屋なんかどうだろう。 俺はグループメールにメッセージを送る。 ーーお疲れさま。お店の詳細だよ。今週末宜し く! ーーおおっ。ありがとう。今週末な。 ーーありがとうございます。楽しみにしてます 三人のグループメールはあっさりと終わった。 お店へは直接集合になり、着いた人からはじめていいという話にしていた。 俺は、幹事でもあり、30分早めに着いてゆっくり一杯先にはじめさせて貰っている。 「マスター、いつものお願い」 「はいよ」とマスターはいつもの定番メニュービールと枝豆を出してくれた。やっぱり、一杯目はビールに限る! と考えながら、上手い!と幸せに浸る。ビールも半分になった頃に新が来た。 お互いに「おうっ」と挨拶を交わし、新もマスターに「いつもの!」と注文する。 ビールが来ると「お疲れ〜」と二人で乾杯 久しぶりともあって二人で色々な話をする。 昔の恋愛はどうとかこうとか?の話になって 新は俺が凄いモテていいな。と言うけれど、 俺からしたらすごく新の方がモテたと思うと言うと、どちらがモテたかという事でどちらも引かず譲らない。 俺達は、二人でモテるモテないとくだらないケンカをして花を待っていた。 待ち合わせ時間の5分前の時間に花も到着した。 「お待たせしました。 お二人どうしたんですか? ケンカ?」 俺達は途中から来た花でもわかるくらいの言い争いを、していたようだ。 「ああ、花にもケンカしてるようにみえた?」 「おい! なんでいつの間に花さんの事、呼びすてで呼んでるんだよ。 馴れ馴れしいぞ」 「いいってオッケー貰ってるし!」 俺達はいつものようにケンカ? のような掛け合いを花の前でしてみせた。 花はふふっと笑って俺達を見守ってくれている。 「花さん、こっちに座って」 新は花を自分の隣りに誘導する。 「いや、こっちにどうぞ」 俺は負けずに俺の隣りに誘導する。 花は少し考えたあと、 「じゃあ、真ん中に」 と花は俺達をかき分けて真ん中にちょこんと座った。 一瞬静寂が走ったあと…… 「ハハハハハ」三人で一斉に笑う。 俺も新もツボに入ってお腹を抱えて笑う。 花はそこまで笑う所?って不思議な顔をして見ている。 「花、ごめんな、俺達、笑いのツボが浅いんだよ」 と笑いながら花に何とか伝える。 そう、俺達は、笑いのツボやツボるのが浅い所まで似ていたからいつも二人で話してても話が合って、 社会人になってここで初めて話した時から直ぐに打ち解けた。 俺の人生の相方と言ってもいいくらい。 そして、花が入る事によって余計に和んで心が高揚してテンションが上がってしまうのかもしれないな。 花が来るだけですごく華やかになるな。 やっぱり人を好きになるとこんなにもみえる世界が変わったくるんだな。 三人で飲みながら、しみじみ思う。 楽しくてお酒も進んでしまう。花も少し顔が赤くて酔いがまわってきてるみたいだ。 新と楽しそうに話している。俺はそんな二人の雰囲気に少し妬いてしまう。二人の距離が近い気がする…… さりげなく二人の会話に入って邪魔してみる。 わざと横にいる花の足にあたるように俺の足を近づける。 新と話す時は、花越しの新に話すから花にくっついてみたりした。 花は意識しているのか分からないけれど…… みんな酔っ払いだからお互いにちょっかいを出しながら話していた。 本当にこんなにも笑ったのはいつぶりだろう。 気がつくと、みんな大笑いしていた。 なんで、こんなに一瞬なんだと感じるくらい、瞬間移動したかのように感じられるくらい時間が短かった。時間は本の一瞬でも、見てるとみんなべろべろだけどな…… 花も少しふらついていたから俺達で送る事になった。本当は新が家が近いから僕が送ると言っていたけれど、そうはさせない! 「酔っ払いの男と女だぞ!」そう言って俺は強制的に二人で花を送るように提案した。 花の家までの道は、川沿いを歩く。とても綺麗に舗装されていて途中に俺のお店『ボヌール』がある。 正確には、俺のお店ではないけど。 俺もいつも通勤で歩いているけれど、この道は好きだ。 だけど、いつもは『ボヌール』までで 今回は初めてその先の道がどうなっているか歩ける。毎回気にはなっていたけれど、近くて遠い距離だ。 でも、これからはそんな事はなくなる予感がする。目的があれば、苦にも遠くも感じない。 ふらつく足どりの花を俺達、両方で支えて歩く。花は上機嫌で笑ったり、ちょっと気にいらない事があれば「こらっ!」っと叩きながら虚ろな目で睨みつけてくる。 花は何を怒ってるのかちょっとよくわからないと思いながら、そんな一面も可愛いと感じてしまう。 俺達は、二人で顔を見合わせ「ハハハ」と小さい声で笑う。小さい声で笑わないと花にまた怒られるからな。 新も俺と同じ事を考えているんだろう。新も小さい声で笑っている。 花は、いつももう少し真面目な印象だけど、酔っぱらうと小悪魔になるようだった。虚ろな目はとても色っぽくも感じる。たまに膨れたような表情をしたり、可愛いイジワルを仕掛けてきたりする。 どうにか二人で花を家のドアの前まで送って行き、中に入るまで見守って、来た道を戻る。 「よかったのか? ここまで来て。 明日も仕事だろ? 僕は家近いし、明日休みだからいいけど」 「二人にする方が心配だわ! 俺、言ってなかったけど、花の事好きだから。 悪いけど、お前には渡さないからな」 「はっ、それはびっくり! はじめて聞いたし」 「まぁ。はじめて言ったし」 俺は後頭部の髪の毛をかきながら答えた。 はじめて新に告白をしてすごく恥ずかしかった。俺の心が丸裸にされた気分だった。 「これからは、俺も遠慮しないから、よろしくね」 そう、俺は余裕ありげに答える。が、しかし 本当は余裕なんて全くない。 おそらく、二人のどちらかが確実に振られる…… もしくは、二人振られる…… ? 「蓮、わかったよ。僕も遠慮しないから」 俺達は花の家からの帰りにお互いの本音を話す。 花と会ってから気持ちがソワソワしていた。 新にライバル宣言したはいいが、これからどうしようと焦りもあるし、花にも会いたくなる気持ちで俺の心はぐちゃぐちゃだ。 花にもっと会いたい。今でも会いたくてしかたない。次の週末も会いたいから連絡してみる。 ーープルルル プルルルルーー 「はい……」 「ごめん。遅い時間に」 「いえ、大丈夫ですよ。どうしたんですか」 「うん。 実は、来週末予定とか入ってたりする?」 「…… い、いえ。予定は、ないです」 「じゃあ、俺と週末デートしない? 会いたいんだ」 「はい、分かりました」 「じゃあ、また連絡するね」 電話を切ってから花は少し元気がないように感じた。俺と会うのが嫌なのか? 変な気持ちは考えないように自分に言い聞かせて、まずは俺を知ってもらう事からはじめないと。 来週のデートはどこにしようと珍しく迷う。 今までは、すぐに決まっていたのにな…… 数日、考えに考えてベタではあるけれど、夢の国と噂されている遊園地に行くことにした。 きっと女性は好きなはず…… 俺は、花と最寄り駅で待ち合わせる事にした。 遊園地は朝、9時から開園しているから早いとも思ったが、8時半に待ち合わせをする事にした。 ここの遊園地は、開園前から並んでいる人が大勢いるらしい…… し、しまった…… 俺、長時間並んだりするの嫌いだった…… 花に言ってから気がついた! でも、話しながらゆっくり並ぶのもいいかもしれないと考えるようにした。 当日になり最寄り駅で待っていた。 向こうから来る花がすぐに目に入った。 嬉しくて顔に出てしまいそうだけど、平常心を装う。 「おはよう」 「おはようございます」 と花はニコッと微笑む。とても可愛くて、すぐにでも抱きしめてしまいそうになる。 軽い男と思われたくないから、我慢する。 普通にしろ! 俺! 心の中で、二人の自分が戦っている。 今までは、思っているままに動いてたし、拒否してきたならすぐに突き放してきた。何人もの女を泣かせた罪かな? 今になって想いを寄せている相手に突き放されるという事はとても辛い事だとわかる。 もし、花に嫌われたらと思うと考えるだけ恐ろしい。 俺は…… 俺の心はどうなってしまうのだろうか? 俺がそんな事を考えてるなんて花は思ってもいないだろう。 「久しぶりだな〜 ここに来るの! 大学生の頃来た事があるんです」 楽しそうに笑っている。 俺は、花の笑顔をみて今日は誘ってよかったなと感じる。 ただ、初めてではない事が、とても残念で俺は少し落ち込んでしまう。 二人で広い遊園地の中をどれから回ろうか相談する。 ここは、食べ物も美味しいらしい。 花が教えてくれた。楽しそうにしている花だけど、時折、寂しそうな表情をする…… じっと見てないと分からない位のほんの一瞬。 気になってしまう。 本当に一人になる時、トイレに行って戻ると悲しそうに眺めているんだ。 俺は、声をかけようか迷ってしまう。もし、辛い思い出があるならここにいるのも辛いだろう。そんな悲しそうな花はみたくない…… ごめんな。 俺、俺のチョイスがはずれたみたいだ…… 「ごめん。 待たせちゃったね、実はさ、ちょっとお腹の調子が悪いんだよね…… 」 「そうなんですか? 大丈夫ですか?」 「花には悪いんだけど、今日は早めに解散しようか? 他にどこか乗りたいのあれば付き合うよ」 「うーん…… 大丈夫です。体調悪いなら無理しないで下さい」 「うん、ありがとう」 俺達は、遊園地を出る事にした。 「ごめんね。 俺のワガママで…… あのさ、明日とか仕事後に時間ある? できたら、今日の埋め合わせさせて!お願い! 」 と俺は、必死で花に頼む。 「えっ…… わ、わかりました」 花はびっくりしつつも承諾してくれた。 よかった…… きっとまた明日も会いたくなる。 次に誘おうと思ったお店は予め決めてあった。 タイ料理のオシャレなお店が花の住んでいる駅から二駅程離れた所にある。 そこは、昔から知っているお店で何度か行ったことがあり、料理も美味しい。 きっと、新が花を誘う時はイタリアン料理のお店だろう。花もタイ料理は行かなそうだし。 俺達は、次の日にタイ料理のある駅で待ち合わせする事になった。 わかれてから、いつも元気な花があんな顔をするなんて…… 頭からずっと離れない。寝ようと思っても眠れない。目を瞑るとあの時の姿が思い浮かぶ。 花の過去に何があったのだろう。 凄く疑問に思えてきた。明日は、花に色々聞いてみよう。もっと花の事を知りたい…… 俺の事も知ってもらいたい…… 待ち合わせの駅で花がこっちに歩いてくる姿がみえる。 仕事帰りのせいか少し髪の毛が乱れているようにも感じる。仕事後は、ああいう感じなんだな。と花のまた違う一面をみて嬉しくなった。 昔の俺なら、きっと、好きな男と会うのに髪が乱れてるなんて有り得ないとすぐに恋愛の対象から外していたと思うけれど、花の場合は可愛くも感じる。 向こうから歩いてくる花を笑って見つめていた。 花は気がついて笑いながら手を降って近づいてくる。 俺も手を振り返して花に駆け寄る。 「お疲れさま。 昨日は迷惑かけたね、あまり楽しめなかったんじゃない?」 「いえ。 とても楽しかったですよ、蓮さんこそ、体調大丈夫でしたか?」 「こら、だから蓮さんじゃない、蓮ってよぶ約束」 「あっ…… ごめんなさい」 花はあちゃーって顔をしている。 「次、さん付けしたらお仕置きするからね」 「えっ、何ですか? お仕置きって……」 「内緒」 俺は花のリアクションが可愛くてついイジワルをしてしまう。 話しながら、タイ料理のお店へ歩き出していた。花も仕事後でお腹が空いているに違いない。俺もなぜかお腹が空いて死にそうだ。 よく、考えてみたら…… 今日は、花と会う事で頭がいっぱいで昼ご飯を食べてない事に今気がつく…… お腹も空くわけだ。 お店までの道のりを一緒に歩く。俺達の距離は手が触れ合うか触れ合わないか、位の距離。 このまま手を握ってしまおうか…… いつもなら意図も簡単に手を繋いだり、抱きしめたり…… 出来るのに。 どうして心のブレーキがかかってしまうんだろう。 俺は、花に色々な事を聞いた。嫌な事でも思いつく事は全部聞いた。花は嫌な事でも最初は戸惑いながら、一応答えてくれた。本当に優しいんだな。俺がどんどん質問ばかりするから、そのうち打ち解けてきたようだ! よく笑うし、冗談も言う。 「もう! やめてください!」と俺の身体を殴ってきたりする。 何回も叩いてくるもんだから思わず腕をガシッと掴む。 俺と花は二人無言になり見つめあう…… 少しずつ二人の距離が縮まる…… キスしたい…… 直前の所で気持ちを抑えて花を抱きしめた。 花の体温を感じる。花の体温はとても暖かい、いい匂いもする。 「俺、花の事、襲ってもいい?」 無意識に心で思っている事をそのまま口に出してしまった…… 何やってるんだ、おれ。 「…… え、と」 花は固まってどうしていいか分からないようだった。 「なんてね! びっくりした? 花が俺を叩いてくるからお返しだよ」と俺は笑ってふざけてみせた。 花はほっとしたように息を一息ついて 「もう、びっくりしましたよ」と笑ってみせた。 どうにか誤魔化せた所でお店に到着した。 花はタイ料理が初めてで、こんなにオシャレなお店ではないと思っていたようだけれど、着いた瞬間に目をキラキラさせて嬉しそうな彼女をみて、心の中で『よっしゃー!』とガッツポーズをする。 昨日は悲しい気持ちにさせてしまったから挽回出来た気がしてテンションがあがる。 「すごく素敵なお店ですね。 私、もう少し違う雰囲気のお店を想像してました」 きっと花はもう少し砕けたお店を想像していたようだ。 俺はいくつかの料理を選んで注文した。 女性をエスコートするのは、仕事柄得意だから。花を姫にしてあげるよ。 料理が、運ばれてきて花が恐る恐る食べる。 「うん? あっ、美味しい!! これはなんですかね? セロリ? パセリ?」 そう言って過剰にパクチーに反応する。 俺は、笑いを堪えようとするけど、クククっと肩が上がってしまい花に気がついてしまった。 俺と目があいながら、「それはね。 パクチーと言うんだよ」とやっぱり笑ってしまう。 「もう、酷いじゃないですか、私、タイ料理は初めてなんです」 「うん、 知ってるっ…… ははっ」 花と目があうと胸がほっとして素直に気持ちが表に、出てしまう。 それからも俺達はふざけながらタイ料理を味わって時には、花をからかい、花は俺に怒ったりもした。この時間が終わって欲しくないとただ、切に願う…… お腹を抱えるくらい笑って、ふざけて。 花は初めての料理に初めての事にワクワクしている子供のような顔をしていた。 俺は、花の隣りに居たい。 絶対に新には渡さない。誰にも渡したくない。 このまま連れ去ってしまいたい。 ずっとこの時間が続けばいい。 でも、時間は待ってはくれない…… 止まってくれない…… 花がトイレへ席を外した時に先に会計を済ませておく。 デザートを食べ終え帰ろうと出口へ向かう。 花は、えっ? とキョトンとした顔をしているから思わず、花の腰に手を軽く添えて出口へ誘導した。お店を出た時には、自然に二人は抱き合っていた。 「花、好きだよ」 花を真剣に見つめる。 「俺の事を、もっとみて」 耳元で話す。花はくすぐったそうにモゾモゾする。 「蓮さん、れ、ん。 やめてください」 嫌がっている花を路地の壁に追い込みながら、俺は強引に花にキスをする。 一度は、軽いキスをしたが、止まらなくなり何度もキスをし、二人の唇が重なる。 「急にごめん。でも、 俺本気だから」 花は思い切り俺を押すとびっくりして走って行ってしまった。 俺の気持ちを正面からぶつけた。嫌がっている花に無理やりキスしてしまったけど、俺の事…… 少しは気にしてくれるかな…… 胸がズキッと痛む。 胸の痛みと一緒に花に俺の気持ちを押し付けただけだと、後悔した。何やってんだ…… 俺。 馬鹿だな。花を悲しませたくないのに悲しませてるな。 気持ちが抑えられずに行動して後悔をする。
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