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蓮に花の気持ちを聞いて、僕も遠慮しないなんて言ったけど、 僕に果たしてそんな積極的に行動が出来るのだろうかと不安で仕方なかった。 でも、花への気持ちが大きくなって、花の辛い想いを一緒に背負えたらと思ったら昨日は自然と想いを伝えられた。 今考えると、僕にあんな行動が出来るなんて不思議でしかも恥ずかしくなる。 「はぁ〜」思い出すだけで恥ずかしくて、これから花にどういう顔で会えばいいんだろう。 僕が最初に誘った週末、花と蓮が仲良さそうに歩いている所を見かけた。二人が余りにもお似合いにみえて、花の事、諦めようとも考えた蓮には、ああは言ったけど、実際、二人を目の当たりにすると僕は怯んでしまう…… 本当に、僕は、自分が嫌になるくらいにネガティブになってくる。花と連絡をとるのはやめた方がいいかもしれないと考えたて逃げてばかりいる。蓮が相手だとかなわない。 そんなだとダメだと自分を奮い立たせて思い切って花を誘った。逆に今までの僕はすぐに諦めていたけれど、行動してみてよかったと思う。 今までと違い新しい自分になれた。かわれている気がする。 この前、ショッピングモールに行った時も自然に想いを伝える事が出来たし。少しずつ彼女を知っていこう。彼女は、踏み出すのが怖いって言っていた。それなら、怖くなくなるまで支えてそばに居て、大丈夫になったら一緒に進んで行ったらいい。彼女となら、そう想える。 今日は、週末のショッピングモールに行く日 楽しみだけど、今回はどこに行こうとか、そういうのはノープランにした。 きっと彼女が凄く楽しみにしているから彼女の好きにまわって僕は付いて行こう。 前回と同じ最寄り駅で10時に待ち合わせをする。僕は、何時でもよかったけれど、花さんが早く行きたいというから10時になった。本当はもう少し早い時間がよかったらしいけど、気を使ってくれたみたい。今日は、気合いを入れないと疲れそうな予感がする。色々な所へ歩き周りそう。 まぁ、僕と一緒に居る時は緊張しないで自然体の彼女でいられるなら嬉しい。 最寄り駅に9時45分頃に着いたけれど、遠くから既に待っている彼女が確認できた。相当楽しみにしているらしいと、僕よりも先に待ってる時点で感じとれる。 今日はやっぱり、気合い入れて彼女に付き合ってあげないとな。そんなに喜んでくれていると思うととても嬉しい。 どんどん二人の距離も縮まっている気もするしお互いに一緒にいる事が当たり前になったらいい。 朝から彼女はとても元気でウキウキはしゃいでいた。パンフレットを片手に「ここも行きたいし、ここも!」と指さして僕に教えてくれるのだけど、パンフレットよりもウキウキした彼女の表情に目を奪われてしまう。 パンフレットもすり減っていたり少し傷んだ様子でずっと見てたように感じられる。 「聞いてますか?」 彼女は真剣な面持ちで僕を見つめる。 「うん。聞いてるよ、花さんにお任せするよ!僕は君について行けば間違いないもんね!」 と元気良く答えてみる。 「ははっ、新さんぽくない。ごめんなさい。私、気合い入り過ぎてしまいました」 僕は全然と手を振る。 「もし、今日まわりきれなくても、何時でも付き合うからまた来よう!」 そう言うと彼女は嬉しそうに「はい!」と満面の笑みで頷く。 なんて楽しいんだ、朝から凄く楽しい。 花さんによるとまずは、洋服の買い物! 今、セールしているようで、午前中は洋服の買い物をしてお昼過ぎの13時〜14時位にランチとの事だ。お昼の時間は混んでるからね。 よかった…… 朝ご飯とってきて、体力は持ちそうだ。 「あっ、これ安い、どうですか?」 「うん、可愛いよ。似合ってる」 「本当に? ちょっと試着してきても大丈夫ですか?」 「いいよ、待ってるからゆっくりしておいで」 「ありがとうございます。行ってきます」 と言いながらこれもあれもと試着室に持っていく…… 女の子ってこんな感じなのかな…… ? 初めての体験。ちょっと新鮮。 流れとしてはそんな感じで一軒一軒見て行く。 時間はかかるけど、ゆっくり待っている時間もあるからスマホをいじって待っていればあっという間だ。 ただ、荷物がどんどん増えていくから持つほうはちょっとしんどい時もあるのかな。と世の男達を尊敬するぞ!っと考えてしまう。 僕は、大変だけど、初めてだし、花さんの荷物が持てるならと都合のいい男を演じてみせる。 これが毎日だったら正直吐きそうになりそうだけど、そうじゃないから、幸せな悩みだな。と思う。 彼女は、最近買い物をあまりしてなかったんだね。お金の事は気にせずにどんどん買っていく。 「花さん、お金は大丈夫?」 さすがに心配になって声をかける。 「はい。大丈夫です。私、何年も買い物してなかったから、何だかとても嬉しくて」 「そうだったんだ。なら大丈夫だよ。ほら、今はテンション上がってるからいっぱい買い物してるのかな? と思ったんだ」 「あっ、ごめんなさい。確かに! でも、最初から予算決めて買う事決めてきたから、決めた金額まで買います」とニコッと笑う。 僕は、その予算とやらを聞きたい気持ちはあったけど、怖くて聞けない。 「うん、じゃあ、予算超えたら買い物終わりだよ」 「はい!」と彼女はガッツポーズをする。 予定していた予算まで買い終わった頃には凄い量の袋だったから、とりあえず、コインロッカーに入れてまわることにした。 ランチをしたいお店も彼女はきめていたようで、ランチバイキングになっているレストランになった。 このレストランは有名なお店らしい。バイキングだけど、料理は最高です! と彼女はドヤ顔をする。 「わかったよ」と僕は頷き、彼女と一緒にお店に入る。お店に入ると店員さんが席に案内してくれる。僕は、歩きながら料理を確認する。 確かに。やべぇ、マジ美味しそう。と心の中で呟いていたが……  「ですよね。美味しそうでしょ、美味しいんですよ」と彼女が僕に向かって話してきた。 「えっ!? なんで僕の思っている事、わかったの?」と驚いてしまう。君はエスパーなのか……? 「えっ? 話してたわけじゃなかったんですか? だって心の声ダダ漏れでしたよ」 そう言って彼女は笑う。 「マジかー 僕、花さんがエスパーかと思ったよ」 「ハハ、それも声出てましたよ」 と彼女は普通に話す。 「マジかー」僕は、自分が恐ろしい。だって、もしかしたら恥ずかしい事も口に出てるかもしれないし。これ以上は怖くて聞けない…… バイキングの料理は、どれもとても美味しそうでローストビーフや色々な料理が何種類も用意されている。 僕は、気にせず思いっきり食べれると思うと、ワクワクしてきた。 ローストビーフは絶対外せない。野菜も食べないと、スパゲティも食べたい。 和食も少し。とお皿に盛っていくと大変な事になってしまった。見てると料理達が個々に存在感がすごい。 どうしよう。これらを一緒にたべたら、ケンカしてしまいそうだ。そう思って口に出さず、彼女に視線を移して訴えてみる。 僕が言ってる事がわかったら、花さんはエスパーで間違いないに違いない。 彼女も料理をお皿に盛り付けて帰ってきた。 やはり、女性だけあってスムーズに用意が進む。とても綺麗に盛り付けてあって僕も一緒に入れてきて欲しいと、お願いしたくなるほど。 「すごい綺麗に盛りつけるね、僕もお願いしたくらいだよ」 「いいですよ。だって食事は目から入るって言いますもんね」 「うん。 じゃあ、次にお願いします」 「お易い御用です。今日は買い物一緒に付き合って頂いたので」 二人で美味しいねと食事をする。 いいな。こういうの。二人で美味しいねと言い合って食事する事。 実家を出て一人暮しになってからいつも僕の食事は一人。会社でみんなで食べる雰囲気の時もあったけど、それも鬱陶しく感じていた。一人で生活している事に慣れてしまっていた。 最近は、週末になると彼女と一緒に過ごす事が多いからなのか、彼女の明るさに慣れてしまったのか、僕は、君が居なくなってしまったら凄く寂しくなりそうだ。 ふと、そんな事を考える。本当に不思議だな…… お皿にのった料理を食べ終わって彼女が選んで盛り付けてくれた。とても綺麗に盛り付けてあるので記念にと写真をとる。 「ほら、撮るよ」と僕は彼女を写真に収める。 ここにある今という時間を焼き付けておくために。今の幸せな時間を僕の心の中にしまうんだ。 花さんがとってきてくれた料理を食べて最後にデザートを食べる。 女性は、やはり甘いものが好きみたいだ。 花さんは、一人であれもこれもとキョロキョロしている。 僕は、甘いものは得意ではないので、コーヒーゼリーが目に入ったから一つお皿に盛る。 流石に有名なレストランのバイキング。普通のコーヒーゼリーではない。見た目もかなりオシャレだし、味もとても美味しい。生クリーム? ムース?が一緒にはいっているけれど、絶妙なバランスでコーヒーゼリーとあっていて癖になってしまいそうだ。 ゼリーも柔らかく、プルンとしている。 花さんは、キョロキョロしているかと思ったらあれもこれもとお皿に盛り付けて持ってきた。 「すごいね。女性はいっぱい食べられるんだね」 「神谷さんは一つでいいんですか? もったいないですよ。ここのは、有名だから、無理してでも食べておいた方がいいですよ」 と彼女は、小さな声で僕の耳元にささやいた。 「ああ。そうなんだね。それじゃ、僕ももう少し食べようかな。いい機会だもんね」 僕はドキッとしながらも平常心を装って彼女と話す。 彼女は、わざとじゃないんだろうな。計算していない所もモテるんだ。きっと。蓮が本気になるくらいだし。 彼女を人の目から隠してしまいたいと思う程 愛おしさが増していく。僕の心は加速して大きくなるばかりだ。 彼女は、デザートと紅茶を入れてきて幸せそうに味わっている。 「はぁ〜 美味しい〜」 ほっとした顔をみせる。 僕も追加のデザートとコーヒーを入れて 食べる。二回目に、取ってきたデザートは、フルーツタルト。唯一甘いものが得意ではない僕が食べるデザート。フルーツタルトは、カスタードとタルトのサクサクのバランスが大事だと僕は思っている。 一口、口に運ぶ。 「う、美味い……」 心の声が出てしまったみたいで彼女が反応してくれている。 「ですよね! そのフルーツタルト凄く美味しいですよね。私もほら、持ってきてます」 結局、フルーツタルトが美味しすぎて二人でおかわりをした。 流石に恥ずかしさも、あるから二人でジャンケンで、決める事にした。 お互いに負けまいと迷信と言われている事をして気合いを入れる。 「ジャンケンポン!」 「ジャンケンポン!」 結局、負けたのは…… 僕。 「やったー!」 とすごく喜んでいる。 恥ずかしいといってしまえば、恥ずかしいけれど、約束は約束だ。恥ずかしくても聞いてご希望のデザートをとってくる。 「ありがとうございます」 どうにか、彼女の希望のデザートを取れてこれたようだ。 「美味しすぎる〜 」と彼女は溶けそうな表情をしている。 僕はそんな君を見ていられるなんて幸せだよ。 「はぁ〜 お腹いっぱい」 「そうだね。いっぱい食べたね」 二人で満足してお店を出る。 「いっぱい運動しないとですね!」 「うん?」なんか嫌な予感がする…… 「次は、雑貨屋攻めますよ!」 「わかりました! ついて行きます」 食べたばかりでも彼女は元気で雰囲気的にエンジンフル回転しそうな勢いだ…… はは ダメだ! 僕は今日は彼女の一日アシスタントだ! 彼女に付き合うと決めたのだから。 慣れるというのは、怖いことだ。最初は何でも聞いてあげよう、そばに居て見守っていこうとか想っていても慣れてくるとネガティブな気持ちが働いてくるんだから。 ここのショッピングモールは、意外と雑貨屋が多くて洋服屋と同じくらいあるのではないかと思うほど。 値段は高いお店や手軽な値段で買えるお店が様々あった。彼女は、食器が好きみたいでこれで盛り付けたらいいかもとか見て楽しんでいるようだった。 「僕達の新婚生活に買おうか?」 「な、なに、言ってるんですか!?」 と彼女に冗談を言ってみる。彼女の反応を見ながら笑ってしまう。 彼女は恥ずかしいようで顔を赤くして慌てている。 「もう! 馬鹿にしてるんですか!」 彼女は少しすねているようにふくれている。 僕も恥ずかしいとは思っていたが、こんなにも自然に言葉が出てくるなんてね。 まあ。付き合ってもないけれど、僕達。 おかしい人って思われたかな? 僕もそれだけ、彼女に対して素直な感情が出せるようになってきたってことかもしれない。 お店をまわりつつ、たまに休憩を兼ねてカフェでお茶をする。午後は、雑貨屋、カフェ、雑貨屋、カフェの繰り返し。 そんな過ごし方もいいかも。良く歩いて運動して。明日は一日中家にこもりそうだ。 トイレから行って戻ったら、 ふと、彼女は初めて見かけた時と同じように空を眺めて幸せそうに笑っている。 僕は、あの時の僕達だけが存在する世界。無音の世界、あの日の事を思い出した。 「君は、今何を考えているの? 感じているの?」気がついたら、自然に近づいていて話しかけていた。 はっ! っと彼女の世界に入ってしまった…… 邪魔をしてしまってないか…… 心配になった。 彼女は、僕に気がついて我にかえる。 「おかえりなさい。ああ、空を眺めていたんです」僕にニコりと笑いかけながら話す。 「空が綺麗で、見てみて下さい。幸せな気持ちになりませんか? 空を眺めて、風を感じて自然と話をしてるんです。 ああ、幸せだな。って思えるから」 「そうだったんだね。ずっと前に川沿いの道で花さんを見かけた事があってすごく幸せそうな顔をしていたから、君の世界はどんな世界なんだろうって、それから気になっていていつか聞いてみたいなと思ってたんだ」 僕はそのままの気持ちを伝えた。彼女も最初は僕の突然の質問にびっくりしていた様子だったけれど、話してるうちに納得したようだった。 疲れた時や朝に空を見上げていると自分の悩みなんてちっぽけに思えてくるようで、自然に触れる事で癒されるらしい。 彼女からその話を聞いて「僕も真似していい?」 って聞いて、空を見上げみた。 今日の天候は、快晴で雲一つない、真っ青な空で気持ち良く感じた。真似してみて納得! よく、山に登る人がいるけど、自然に触れて山頂で見上げる空や空気を感じて気持ちがいいのかな。 僕は、山登りは苦手だけど、一度はやってみたら気持ちいいかも。と思った。 「ホントだ、気持ちいいね!」 「ですよね」 と僕達は顔を見合わせて笑った。 午後の雑貨屋とカフェの行き来で気がついたらあっという間に夕方になっていた。 考えてみれば、最初は疲れたけれど、僕も色々な雑貨屋をまわるうちに楽しくなって一緒に雑貨をみてまわっていた。 我が家にも気にいってコップのセットを買った。夏用に使っていたものが一つ割れてしまっていてグラスのコップは一つしかない。あまり家に人は来ないけど、何かの時にもいいし、このグラスのデザインは目に入った瞬間気に入ったから、僕には珍しく、即買いした。 コップは切子ガラスでシンプルなデザイン。 ちょっと上品にみえる。値段が少し高いかもな、と思ったけど、彼女に勧められた。 「気になった時に買わないと!出会いだから」 ショッピングモールは頻繁に行くわけでもないしそこまで言うならと思い切って買う。 新しいコップが買えたと思うと嬉しい気持ちになる。お客様用にもするけど、一つ自分用にするのもありかもな。すごく気持ちがワクワクする。きっとこういう気持ちが買い物中毒にさせるのかもな。僕は頭の中で想像してしまう。 何か嫌な事があった時は買い物でストレス発散もたのしいかもしれない。 僕は、片方の手にコップが入った紙袋を持って歩く。 彼女も小さい紙袋で数個、片手で持っている。 「さて、帰りはどうしようか?」 僕は突然、彼女に切り出す…… はっ! …… そ、うだった。僕の一言で夢の世界から現実に戻されたような感覚になる。 ロッカーに大量の荷物。とりあえず、ロッカーで出してみてまとめられるのはまとめてみる。 まとめたけれど、一人で持つには多いな。 二人ならなんとか持って行ける量だから、 僕は、彼女の家まで届ける事になった。 夜遅くにいいのか? と心の中で自分と相談する。僕の心の声、漏れてないかな? それがすごく気になってチラチラ彼女を見つめる。 「どうしました?」と彼女は気づいて僕に話しかける。 「何でもないよ。気にしないで」 「神谷さん、今日は私の買い物に付き合って頂いてありがとうございます。すごく楽しくて久しぶりにはしゃぎました」 「うん。なんかそれはわかったよ。すごい楽しそうで僕も嬉しかったよ」 二人で重い荷物を持ちながら歩いている。 彼女は、僕に向いてた視線を逸らし 「今になって恥ずかしくなってきました」 と少し慌てた様子だった。 「これからも、いつでもつき合うからさ。全然気にしなくていいよ」 「ありがとうございます。私、神谷さんと出逢えてよかったです」 「えっ? 何? どうしたの?急にどうしたの?」 僕はそんな事言われると思ってもみなかったから嬉しくて、照れてしまう気持ちを隠すようにとっさに素っ気ない返事をしてしまった。 「あ。急に言われてもびっくりしちゃいますよね、今、本当に私が感じた気持ちをそのまま言っただけです。私、ずっと……心が暗い所に居たんです、だから、神谷さんに出逢えてその心を光が指す方向に導いてくれた感じだったんです」 彼女は自分の気持ちを正直に伝えてくれていた。僕の事が好きなのかどうかそれは分からないけど、彼女の中の僕の存在が大きくなっているのがわかったから一歩でも僕の存在が助けになるのならうれしい。
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