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キミを拾った
昨夜わたしは猫を拾った。
まだ若く、少し痩せ過ぎな気もするが綺麗な毛並みの猫だ。
彼は地面に座り込み夜空を見上げ、月を見ていた。
その瞳があまりにも寂しそうで、あの日の自分を見ているようで、思わず声をかけてしまったのだ。
「うちへ来るかい? 仔猫ちゃん」
彼はじーっとわたしの事を見つめ、小さく「にゃあ」と鳴いた。
――ほんの出来心だった。
昨夜は久しぶりに友人と会ってアルコールを少し、いや、大分飲んでしまっていた。
変なテンションだった事は自覚はある。
だから、半分冗談のつもりだった。
まさか彼がわたしの誘いに乗って来るなんて思いもしなかった。
彼が可愛い声で「にゃあ」と鳴くなんて――――思いもしなかったんだ。
さて、そろそろ現実逃避はなしにして――覚悟を決めようか。
わたしの横で静かな寝息をたてて眠る青年の綺麗な寝顔。
わたしは昨夜久しぶりに飲んだ酒に酔ってやらかしてしまったのだ。
―――わたしは昨夜、人間の青年を拾ってしまった。
裸の自分と裸の彼。
つまりは昨夜そういう事をしてしまったという事。
――――――本当に?
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