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プロローグ
私が見つめる大型の液晶画面に『BFR』と『スーパーヘビー』の全てのステータスが離床準備を整えていることが表示されている。右上のカントダウンはT-120で停止中だ。
タッチパネルを操作して、BFRの外部カメラを表示させる。そこにはケネディ宇宙センター39A発射台から眺めた360度の映像が映し出されている。
フロリダ半島から望む大西洋の蒼い水平線の上空には快晴の青空が広がっていて、私はその遥か先をイメージしていた。
「綺麗! あの青空の先、宇宙へ行くのね」
管制室からのアナウンスが流れる。
「フライトダイレクターだ。オールシステムはGOだ。それではカウントダウンを再開する。Tマイナス120セカンド」
その瞬間、止まっていたカウントダウンの表示が動き出した。全自動で進む発射シーケンスがリストアップ形式で液晶画面に表示されていく。
「スーパーヘビー、BFR、自立制御に移行」
「Tマイナス60セカンド」
「スーパーヘビー、準備完了」
「BFR、準備完了」
「Tマイナス30セカンド」
「全システム離床準備完了」
「行くぞ、スーパーヘビー、BFR、Go For Launch!!」
フライトダイレクターの声が響くと共に管制室から大きな歓声が上がるのが聴こえる。
「10」
「フライトモードON」
「8、7」
「メインエンジンスタート」
身体に烈しい振動が伝わって来る。
「3、2、1」
「離床」
背中をシートに押し付けられる凄まじい加速度が襲って来た。そしてスーパーヘビーが尾部から31本のラプターエンジンの激しい噴煙を引きながら、発射台を離れていく。
「さあ、月へ行くわよ!」
激しく振動をしているBFRのコックピットで私はそう叫んだ。
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