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「あ、入来ちゃんからメールだ」
戸部君がそう言うと同時に、私のスマホも一回だけ振動した。
画面を確認すると、チームのグループメールに入来ちゃんがメッセージを入れている。
どうやら入来ちゃんのお父様が、ぎっくり腰になったらしい。
今日は一日付き添うから、欠席するといった内容だった。
「入来ちゃん大変だなぁ。実家の整骨院、心配だね」
戸部君が同情しながらメッセージを送ると、私もそれに合わせるように返信した。
クラスはどんどん賑やかになり、もう少しで今日の授業が始まる。
「ナオちゃん、今日も足貸してもらえる?」
「全然いいよ。二日連続で施術受けられるなんて最高じゃん」
今日は入来ちゃんが戸部君に足を貸す番だけど、こんなイレギュラーの時は仕方がない。
むしろ、戸部君の施術を受けたかった。
戸部君はすでに、プロ並みのスキルを持ち合わせている。
学生の身とはいえ、私の冷えきった心と足裏を温めるには、申し分なかった。
「今日は座学を中心に行います。眠くならないように注意してくださいね」
先生が開口一番、悪魔のような宣言をすると、さらに頭が鈍くなった。
昨日の睡眠量だったら、間違いなく居眠りするはず。
だけど、放課後は戸部君の施術が待っている。
そこまでは何とか耐えて、楽園のような自主練を迎えよう。
意地でも寝ないことを決意し、強い気持ちを持って授業に臨む。
授業中は、何度も睡魔が襲ってきたけど、その度に手の甲を抓ってごまかした。
何とか一度も眠らずに、授業を乗り切ることに成功する。
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