プロローグ

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「おかえり、今日もユウキ君と帰ってきたの?」  これから夕食の準備に取り掛かろうとしている母が、エプロン姿で出迎えてくれた。   「そうだよ、養成学校に行くこと話した」 「驚いてたでしょう?」 「うん、バカじゃないって言われたよ」  このマンションに引っ越してきたのは、中学一年生の時。  父の仕事の都合でずっと転勤族だったけど、東京の本社勤務になってからは、異動になることがなくなったらしい。  それからこの地域で一番大きなマンションの一室を買い、家族三人で仲良く暮らしている。 「ユウキ君だったら言いそうね。でも本当にいいの? 大学に行かなくて」 「もう決めたから。お父さんの反対も何とか押し切ったしね」  学年成績トップだった私が、大学に進学しないと決めた時、父には烈火の如く叱られた。  『今の時代に大学行かないやつがどこにいる!』  『何のために勉強して来たんだ!』  『人生を台無しにするつもりか!』    等々、数え切れない暴言を吐かれた。  もちろん、私を思っての意見ということは重々承知しているけど、中には耐え難い発言もあって、胸が苦しかった。  だけど、自分の気持ちだけは変えたくない。  自分の人生、自分で切り開きたい。  その思いを一心に背負って、泣きながら父とぶつかった。  そして、私の真っ直ぐな目に根負けした父から、渋々ながらもオッケーを貰うことができたのだ。 「それでナオが行きたい学校、何て学校だっけ? 日本……」 「日本セラピスト養成学校」
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