プロローグ

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「そうそう、日本セラピスト養成学校! その願書はもう出したの?」 「うん、もう出したよ」  進路について悩んでいた時、偶然図書室にあったパンフレットが目に入った。大きい文字で『日本セラピスト養成学校』と書かれているパンフレットが。  聞き馴染みのない学校名に、思いもよらない興味が湧いた。  軽い気持ちで手に取り、パラパラとページを捲ると、ある一文に目が奪われる。   『あなたの手で、温もりを伝えよう』という謳い文句が、私の心を揺さぶったのだ。  ユウキ……。  あなたの足は、温もりを感じられるかな。  私が触れても、何にも感じないのかな。  もし、私の手で、温もりを伝えることができるなら。  この人生、捧げてもいいかも。  思い立ったが吉日、その夜すぐに両親にパンフレットを見せた。  昔から、一度決めたことは突き通す性格だ。  自分でもその性格が面倒だと思う時もあるけど、なんだかんだ気に入っている。  一方、何回言っても学校名を覚えられない母は正反対な性格。  私のそういうところは、父親に似たのだろう。 「もう願書出したんだ! さすがナオ、仕事が早いわね。あと何だっけ、また忘れちゃった、あなたが通うコースだけど……」 「ああ、リフレクソロジーコースね」 「そう、それそれ! カタカナが多くて分かりづらいわ。そのコースで本当に良かったの?」 「うん、リフレクソロジーがやりたかったから」
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