プロローグ

4/4
前へ
/177ページ
次へ
 数あるコースの中から、リフレクソロジーコースを選んだ。  リフレクソロジーとは、足裏健康法のこと。  足裏には体の臓器や器官が反射されており、これを反射区と呼ぶらしい。  親指は頭とか、踵は腰だとか。  その足裏に反射している場所を、セラピストの指で刺激することによって、身体全体の健康促進に繋げるというもの。    全てパンフレットに書いてあることしか頭に入っていないけど、イメージは湧く。  だけど反射区とかの知識よりも、私の興味を駆り立てたのは、温もりを伝えるということ。  ユウキの動かない足に、温もりを伝えたい。  それができるのは、地球上で私しかいない気がする。  鋼のように固い意志を纏った私は、他のページを開くことはしなかった。  資格を取るなら、足専門のセラピスト、リフレクソロジスト一択だ。    この話も何回も母に伝えているのに、一向に理解してくれない。  その度に同じ熱量で話す、私の身にもなってほしい。 「ま、ナオが決めたならそれでいいけどさ。ほら、夕食の準備手伝って」 「はーい」  それから毎朝、ユウキと会えば進路の話。  その度に適当にあしらっていると、あっという間にセンター試験が終わった。  物理的に行けなくなったのにも関わらず、今度は浪人してまでも大学に行けと言われる始末。  ユウキは無事に、まあまあの大学に進学することが決まり、もちろん私の養成学校行きも決まった。  中、高一緒だったユウキと、初めて違う学校に通う。  それは心配でとても不安だけど、帰る家は同じマンション。  寂しさは全く感じない。    期待と覚悟を胸に抱き、新たな生活が始まろうとしている……。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加