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今日の本来の目的は、入来ちゃんと戸部君を急接近させることで、私の思い出を増やすことではない。
自らの欲のためではなく、二人のために行動しないと。
ここは空腹状態をグッと我慢して、私はこの場で待機しよう。
なだれ出る唾液を引っ込めて、思いついたように発言する。
「あ、みんなで行っちゃうとこの場所取られちゃうから、二人で好きなの買って来なよ」
よし、極めて自然に言うことができた。
これくらい自然なら戸部君も勘づかないだろう。
涼しい顔をしながら、二人を見送ろうとする。
「そっか、じゃあナオちゃんの好きなものも買ってきてあげるよ。焼きそば? お好み焼き? それともじゃがバターとか?」
戸部君のチョイスしたメニューは、私が目をつけていたものばかり。即座に答えることができずに、考え込んでしまう。
「えーと、そうだなー、じゃあ焼きそば! いや、お好み焼きも良いな。でも、じゃがバターなんてこういうとこじゃないと食べないからな……」
楽しそうに迷っていると、その様子を見て不憫に思ったのか、苦笑いしながら入来ちゃんがフォローをしてくれた。
「ナオちゃん行ってきなよ、私待ってるから」
入来ちゃんに気を使わせてしまった自分が恥ずかしい。
それだけは違うという思いが溢れ出て、首をブルブル横に振りながら全力で否定する。
「いや、大丈夫! じゃあ焼きそばでお願い! お金は後で返すからね!」
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