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急な圧力に驚いている二人は、不思議そうにしながら屋台の方に消えていった。
戸部君が寄り掛かっていた電柱に、今度は私が寄り掛かる。
よく大通りを見てみると、たくさんのカップルが、今か今かと花火の打ち上げを待ちわびている。
日も良い感じに落ちてきた。
電柱の白い光が、少し雰囲気を壊しているけど、花火が始まれば関係なくなるだろう。
人混みの中には、車イスに乗ったおじいちゃんもいた。
後ろのハンドルを握っているのは、おそらく何十年も一緒に連れ添っている奥様だと思われる。
最愛の人と、思い出を作れる気分って、一体どういう気持ちなのか。
私にもいつか、そんな日が来るのかな。
車イスに乗ったユウキと、それを支える私と、いつか二人で……。
完全に日が落ちて、もはや誰の顔か識別できないくらいに、夜になった。
まだ二人は戻ってきていない。
このまま、一人で過ごす花火大会も悪くはない。
きっともうすぐ、ここに戻ってくるだろうけど。
この買い物の時間で、良い雰囲気が作れていますように。
”バン、バン、バーン”
なんの前触れもなく、出だしの花火が鳴り始めた。
それと同時に、周りから感動の声が溢れ出る。
時計を見てみると、打ち上げ開始となる七時ピッタリになっていた。
いよいよ、今年の夏の大目玉が始まった。
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