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「よし、ここまで来れば安心だ」
慣れない下駄で足早に進むと、人が少ない通りに出られた。
ここからでも十分に、美しい花火が見られる。
せっかく参加した花火大会、最後まで見届けていくかと立ち止まると、いよいよ今日一番の迫力が空に出現した。
目に収まりきらない大輪の花は、自然と私の表情も明るくする。
さっきの場所に比べると少ないけど、周りにいる人たちからも、感嘆の声が聞こえてくる。
「すごいなぁ……」
私も我慢できなくなって、率直な感想が口から出てしまう。
つい発してしまった独り言に恥ずかしくなって、慌てて周りを見てみると、信じられない光景が目に入ってきた。
その光景に、鳴り響いている花火の鼓動が相まって、私の心臓は大きく揺れ動いた。
わずか十メートル先の、小さなスペース。
ちょうど人混みの影響を受けないその空間に、ユウキがいた。
もちろん一人ではない。前に見たことがある女性が、しっかりと付き添っている。
ユウキの肩に手を置いて、にこやかな表情で圧巻の花火を楽しんでいた。
いつも目にする、あの車イス。
そして隣には、親しげに笑い合っている美しい女性。
まさか……やっぱり、そうなのかな。
でも、しっかり聞いてみたい。
その女性は、ユウキにとって大切な人なのか。
話しかけに行こうと一歩目を踏み込んだ時、大きくて温かい手が私の腕を掴んだ。
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