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夏休みは合宿に
「明日から夏休みに入りますが、この学校は養成学校です。大学と違ってそこまで長期的ではありません」
世間の大学生は、約一か月くらい夏休みがあるはずなのに、私たちには一週間ほどしか与えられない。
信じがたい現実を、冷酷非情に先生が発表する。
だけど、クラスの落胆の中に私は混ざれなかった。
もうすでに、心がどんよりとした気分になっているから。
花火大会以来、ユウキのことが気になり過ぎて、食事も喉を通らない状態にある。
夏休みが一週間しかないことなんて、大した問題ではない。
「そこで、今から課題を言い渡します」
「課題!?」
こんな状態でも、課題という言葉には反応できる。
内容によっては、今の落ち込んだ状況に追い打ちをかける可能性もあるから。
どうか楽な課題でありますようにと、願うようにして先生を見つめる。
「この夏休み期間に、必ず一人以上に施術をしてきてください。もちろんレポートも出してくださいね」
先生がきりっとした顔で内容を言い渡すと、私は心からホッとできた。
それは、いつもやっている課題と全く変わらないから。
いつも通り、母に頼めばいいだけのこと。
一安心したところで、またユウキのことが頭に浮かんだ。
花火大会の時、ユウキに連れ添っていた女性のことも。
一体どういう関係性なんだろう……そのモヤモヤがずっと頭の中を回っている。
「先生!」
ピンと伸びた長い左手が、私の隣で存在感を放っている。
毎度のことながら、戸部君から質問があるみたいだ。
「戸部君、どうかしました?」
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