夏休みは合宿に

1/12
前へ
/177ページ
次へ

夏休みは合宿に

「明日から夏休みに入りますが、この学校は養成学校です。大学と違ってそこまで長期的ではありません」  世間の大学生は、約一か月くらい夏休みがあるはずなのに、私たちには一週間ほどしか与えられない。  信じがたい現実を、冷酷非情に先生が発表する。  だけど、クラスの落胆の中に私は混ざれなかった。  もうすでに、心がどんよりとした気分になっているから。  花火大会以来、ユウキのことが気になり過ぎて、食事も喉を通らない状態にある。  夏休みが一週間しかないことなんて、大した問題ではない。 「そこで、今から課題を言い渡します」 「課題!?」  こんな状態でも、課題という言葉には反応できる。  内容によっては、今の落ち込んだ状況に追い打ちをかける可能性もあるから。  どうか楽な課題でありますようにと、願うようにして先生を見つめる。 「この夏休み期間に、必ず一人以上に施術をしてきてください。もちろんレポートも出してくださいね」    先生がきりっとした顔で内容を言い渡すと、私は心からホッとできた。  それは、いつもやっている課題と全く変わらないから。  いつも通り、母に頼めばいいだけのこと。  一安心したところで、またユウキのことが頭に浮かんだ。  花火大会の時、ユウキに連れ添っていた女性のことも。  一体どういう関係性なんだろう……そのモヤモヤがずっと頭の中を回っている。 「先生!」  ピンと伸びた長い左手が、私の隣で存在感を放っている。  毎度のことながら、戸部君から質問があるみたいだ。 「戸部君、どうかしました?」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加